卒業式
『卒業式には行くね』
晴子さんからの手紙にはそう書いてあった。出身大学の卒業式がもうすぐあり、そのタイミングでこちらへ来るらしい。
「バイトがあるんだよな」
晴子さんとは手紙のやり取りはしているものの、最後に会ったのは一年ぐらい前になる。その時は特に会いたい相手ではなかった。けれど文通をするうちに、会いたいなあとなんとなく思うようになっていた。
後輩達の卒業式の日、バイトを終えて大学に急いだ。大学に着いて、うろうろと歩く。
「あ、三輪さん。お久しぶりっす」
「お、卒業おめでとう」
「三輪さん、本当にありがとうございました」
「いやいや、何もしてないから」
卒業する後輩に会い、祝いの言葉を述べる。その後、服部祐民子さんの新しいアルバムのタイトルが『青虫』で~などと雑談。話しながら周囲を捜すも、晴子さんの姿は見つからなかった。
他の後輩達にも会って祝いを述べたが、晴子さんはついに見つからなかった。
「三輪くん、在庫の確認頼むわ」
「はい。じゃ、地下行ってきます」
地下の大きな冷蔵庫に、食材の在庫を確認しにゆく。卒業式からは数日が過ぎていた。
「この冷凍ケーキ、うまいんだよなー。……残り3個と。キャベツ、よし。米もまだオーケー」
ラブホテルとはいえ、ここのご飯はうまい。ちょっと長引いた日に、厨房のおねいさんに作ってもらったまかないが感動的だった。……もっとも、普段の食生活がひどいせいでよりおいしく感じた面もあるだろうが。
なお、厨房のおねいさんの見た目は二十代後半ですが、大学を卒業したお子さんがいるそうです。お姉さんともおばさんとも言いにくい気分なので、おねいさん。
バイトを終えて帰宅すると、電話が鳴っていた。