この世界との出会い
今日はテストで赤点をギリギリ回避したと思っていたら、自分の漢字を間違えていたみたいで減点され、
ギリギリを超えて赤点という悲劇が生まれてしまった。
「桑津田君! なんで名前が津田沼君になるのよ! 自分の名前間違えるのは減点です!」
先生は呆れた顔で言っている。そう、俺の名前は津田沼ではなく桑津田平人だ。
「ごめんなさい。でも、赤点になるとご飯の上にシャリが乗らなくなります。きっと、ご飯の上に梅干しが乗せられてしまいますから!」
「そこが問題なの?」
「問題です……」
「今回は大目に見て、赤点はギリギリセーフです。でももう少しいい点とってください……って、全問正解だけど記入しているとこがかなり間違えてます」
「問題答え分かったら書くので」
「なんですか、カンニングですか? 隣の人の見たんですか?」
「そんなことしないです」
「徳川家康は光合成しないですし、植物は天下統一しません!」
そう、俺はうっかりが過ぎるらしい。
この後も何度も先生に怒られたがひるむことはない。
「進路は……まぁいいとしますが。本当に桑津田君は大丈夫なんですか?」
「大丈夫です!」
俺、桑津田平人は普通の男子中学生だ。運が良ければいい点数は取れるし、サッカーボールをオウンゴールしてしまうかもしれない。
だけど、きっと普通の中学生なんだ。
橋の上で小学生の子供二人が遊んでいる。
一人が細長い木の棒を持っていた。
「これナナフシっていうんだぜ!」
「ナナフシ? うわースゲー! ナナフシだ!」
「それをお前に投げる! 喰らえ!」
「いや虫無理だからやめて!」
躱すと俺のもとにナナフシが。俺虫結構苦手なのに!
「うわあああああ!」
余りに驚きすぎたせいか身体がバランスを崩す。
頭を庇うが更に踏み外し、重力に逆らうことなく端から落ちた。
「助けて~~~!」
俺は落ちていく、川へダイブすることになるだろう。
だから、ダイビングの時のようにきれいに入ることはできないかもしれない。
あの二人は審査員であったら、きっと俺は0点だ。
「お兄さん! 大丈夫ですか!」
「平気だよー! それより虫投げるのは虫がかわいそうだからやめよう!」
「普通の棒ですよこれー」
川の流れは思ったより強く俺は流される~
海まで流れ着いてしまう。
「……ここどこ~」
海の中は心地よいけど、流石に何処か分からないところ泳ぐのは怖いな。
サメが出てくるかも。
変な怖い曲が俺の中で勝手に流れ出す。
「っひ! サメ?」
俺は全力でクロールして、地上を見つけるとそこは洞窟だった。
「ここは……結構泳いで疲れた」
びしょ濡れだしドライヤーで早く乾かさないと……
そういえば洞窟はいるの初めてだな。
あたりを見渡すとそこに一つ綺麗な丸い石を見つける。
「……なんだろこれ」
俺は目新しさでこの石に触れた瞬間。輝いた。
~~~
気付くと俺は海で倒れていた。
「うーん。どこなんだろここ」
俺自身に何の異常もないし洞窟に居たんだ。きっと洞窟が俺をここまで連れてきたのだろう。
「……というならだれが」
「おい! そこの怪しい人さん!」
剣を向けられる。
「は、はい! 怪しくないです!」
剣の正体は、馬に乗った綺麗な女性だった。金色の髪に高そうな鎧できっといいとこ育ちの人なのだろうと思う。
「怪しい格好をして怪しく海に倒れているお前のどこに怪しくなさがある!」
「俺が怪しくないって言っているんです。信じてくださいよ!」
「うるさい!」
剣を振り回されるも回避。回避だ。
「今、剣を振り回しているあなたが一番怪しいです!」
その言葉に剣は止まる。
「そうだな。すまない……」
剣を収める。危なかった……命拾いをした。
「命を助けてくれてありがとうございます」
「……え、私が襲った側だが、これでは盗賊と同じだろう」
彼女は俺に手を差し伸べた。尻もちをついていたので掴み立ち上がらせてもらう。
「私の名前はユメテー・ノピッキュ、このログナリス帝国の貴族だ。今はミフミフ王国との戦時中だ。こんな海で倒れているのだからスパイだと思ったのだ」
ログナリス帝国にミフミフ王国という全く聞いたことのない単語に驚いた。きっとアメリカの隣だろう。
「こちらも海で寝ていてごめんなさい。俺の名前は桑津田平人です。好きな食べ物はウナギのたれで味が付いたご飯です」
「ウナギのたれで味が付いたご飯? 聞いたことないが……どこ出身だ?」
「地球です」
「チキュウ……聞いたことがないな。チキュウ……」
この人地球知らないのか、住んでいるのに。まぁいいか
「それよりも、ユメテーさんでいいですか? 俺は何と呼んでもいいんですが」
「普通で良い。たぶん歳もそんな変わらないだろう」
「年上かと思いました」
「貴様、女性にそれは失礼ではないか?」
むっとした顔になる。
「綺麗ってことです。俺はよく子供っぽいと思われるので……まぁ」
ユメテーさんは顔を真っ赤にしていた。
「そ、そんな人を綺麗なんて一度だって言われたことないのに!」
「だから俺が言ったんですよ、綺麗だって」
更に赤くなる。スイカぐらいだ。
「言うなー!」
その時、すごい衝撃が体に伝わる。どしんどしんと恐竜でも走っているのだろうか。
「な、なんですかこれは!」
「はしゃぐな! 敵襲だろう!」
敵襲。確か戦時中とか言っていた。
そういいながらユメテーさんに俺は担がれる。
そして俺は見てしまったのだ。
目の前にいる無数の巨人たちを……
「見つけたぞ! 逃げる貴族女!」
巨人から声がする。
「おとなしく投降すれば命の保証はしてやる。命だけだがな! だからそれ以外は失くすのだ!」
「ユメテーさん逃げてきたんですか……」
「……私は逃げていなどいない。ミフミフ王国との戦闘で仲間を失い……それで」
「逃げてないですね。失礼しました」
「どうした? まだやる気か貴族女!」
ボスなのか、こっちに近付いてくる。この巨人と喧嘩は何があっても俺に勝利はない。
喧嘩なんてするのも嫌だ。痛いのはごめんだ。
「私は……」
しかしユメテーさんは怯えていた。女性がそんな顔をするのはよくないとおじいちゃんに言われたのを俺は思い出す。
「……やめてください! 相手は女の子ですよ!」
「なんだお前は! 男か!」
「はい! 男です」
巨人は俺に反応する。
「巨人さん! どうしてこんなことをするのか俺には分かりません!」
「巨人……ゼロエコーズのことか? あれは魔法だ。中は人間だぞ」
「え」
「馬鹿め! だから奪うのだ! 力が奪う者が奪って何が悪い……正しいのだ!」
その、人は俺を踏もうとした……腕、折れるだろう……
「……使いたくはなかったが。モスーガ!」
光った。この閃光はユメテーさんから出た物であることは確かだ。
「うわぁ!」
すると、身長が上がったのか、そのゼロエコーズという魔法の巨人と等しい大きさ、いや……
というより、これはロボットのコクピット内というのが正しいだろう。
「ここは……」
「私のゼロエコーズのモスーガのコクピットだ。だが……」
「たとえ、モスーガであろうと! この軍勢に敵うことはない! 恐れることなどなかろう!」
そういいながら、敵が襲い掛かる。
「うわぁ!」
巨人同士の戦い、というよりロボの戦いだ。
よく小さい頃見ていたパンチというよりは、剣で戦う。
「ユメテーさんそのモスーガは大丈夫ですか」
「……そんなの無理に決まっているだろ! 馬鹿なのかお前はこの人数を一人で相手など!」
「ごめんなさい!」
そういいながらも、やはり力負けしてしまう。
「はっはっは! 女は打たれ弱い!」
モスガーは倒れてしまい、そのまま消滅してしまう。
「やはり……勝てないか……女だから」
ユメテーさんは悔し紛れに涙を流す。
「女だからなんて、関係ありませんよ! 戦ったじゃないですか」
俺は起き上がり、再び敵のゼロエコーズの前に立つ。
「抵抗もむなしく女は弱さだけ傍から見せていればいいものを、恥ずかしいな!」
「あなた方……それでも、人間ですか!」
そう叫ぶ。
「せめてあなただけは逃げるのよ! 海でもいい泳いで!」
「嫌です。もう水で濡れるのは……」
「ならば、お前から先に命を奪ってやる!」
そういい、もう一度踏みつけられかけた時、ポケットに入っていたソレから熱を感じる。
「あ……光」
「それは……あなたのその白い光が眩しい!」
「……せい!」
ポケットから取り出したのは白く輝くあの丸い宝石。
それを掲げた瞬間、あの現象がもう一度起きる。
俺の周囲は光に包まれた……
~~~
「え……」
そして、俺はもう一度コクピットに戻っていた。
どうやら、今度は俺がゼロエコーズに乗っているみたいだ。
「……ヘイト君。君は……なんでゼロエコーズを持っているの?」
「いや、分かりません。そもそもこれどうすればいいんですか……これどうなってるんですか」
俺からは見えないけど、ロボことゼロエコーズを操っているのは自分。でも操作なんてしたことない。戦うことなんて不可能……でもないのかな。
「この際緊急よ……まず、生き残ることだけ考えてまず……魔力を――って!」
「全部で絶対に生き残りますよ!」
適当に操作、素早く周囲をかき乱し、ゼロエコーズの兵隊を壊していく。
「勝手に動かしてー!」
さっきのユメテーさんのように一定のダメージを与えることができればゼロエコーズは解除される。
「なんだよお前! こんなゼロエコーズ見たことすらない……弱い男が調子に乗るなぁ!」
多分ボスの人の攻撃だ。適当に受け止める。
「調子に乗っていません!」
俺はそのまま、後ろに回り込み腕を脚を殴る。
「だが……このまま負けるわけには行かない! 弱い女と結ばれたいのだ!」
「結ばれたければ……タピオカー!」
そう叫びとどめの一撃、ゼロエコーズに乗っていた敵のおじさんは砂浜で倒れた。
「終わりました……」
周囲を確認しても負傷者はいない。よかった。
「……ヘイト君……あなたミフミフ王国ゼロエコーズがどれだけ強いか分かっているの。それを一瞬で」
「いえ、でも……生き残らないと、ユメテーさんもミフミフ王国の人も殺したくはないですから」
とりあえず一安心……だけど、ユメテーさんは俺をにらんでいた。
「ど、どうしたんですかユメテーさん? 部屋にゴキブリが出て見つからない時みたいな顔をして」
「……私は貴族であり、帝国の平和と繁栄を願っている……ヘイト君」
俺の手を掴んだ。
「私と共に、王国と戦ってくれないだろうか?」
もう俺の答えは決まっていた。
「嫌です。お断りします」
「えぇぇぇぇええええ!」
こうして俺とユメテーさん、そして謎のロボットゼロエコーズのお話が始まる!
続きを書くかは分かりません。