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救いのない世界にドロップキック  作者: 星鴉ゆき
第二章 存在するとは、行動することである
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16話 唖然

余り見慣れない制服を着た少女一人に私服、見るからにガラの悪い男が三人。


雰囲気からしてナンパではなさそうだ。お互いに少しピリついている。いや一触即発の状況。

そもそもここではナンパなんて回りくどい事はしない。

どちらにしろ、このまま見過ごせばあの少女が辿る道はおそらく――。


周りには人が全くいない。巻き込まれないように姿を隠したのであろう。

この場所ではそれが正解だ。


仕事中に、全く関係ない事で揉め事を起こすなんて愚の骨頂。制裁を受けるのは必然。

しかし、視野に入ってしまったでき事、そして結末が予想できてしまう事を

無視して通り過ぎるような事は鴻にはできなかった。


それで制裁を受けるのも予想はできても、今を生きている鴻は今を動く。

まだまだこの世界に染まりきれないのは、幸福なのか、不幸なのか。


「おい。穏やかじゃな――――っえ!?」


喋ってる口をめがけて左からの殴打。


突然の事に対応が遅れたが両手でなんとかガードする。


その暴挙を振るってきた張本人である女は一瞬、目が驚いたように見えたが


すぐに目つきが戻り


即座に蹴りを腹部に放ってくる。

さっきと比べようのない速度で、ガードが間に合わず重い衝撃に息が止まる。


体は地面を転がりながらふっとび、ビルの間から路地に押し出された。

そのまま道に置いてあったゴミ箱をなぎ払い大きな音をたて街灯で止まる。


体の上に乗っかったゴミ箱を払い、ひとまず落ち着こうと思った矢先

とどめと言わんばかりの前蹴りが鴻の顔面に襲い掛かる。


鋭い蹴りを避けるが頬を少し切った。


蹴りはまるで鋼鉄のハンマーのように鴻の後ろにあった街灯を大きく曲げた。


「やるなアンタ。あいつらとはえらい違いや。リーダーかなんかか?」


あいつらと親指で指差した先にはさっきの三人がビルの隙間で仲良く倒れていた。

鴻に仕掛けた瞬間に瞬殺。その手際は鴻と同じく戦人。


鴻を見下げながら、一方的に喋る少女を鴻は反撃をする訳でもなく見つめるだけだった。


「なんや? なんか言えやクズ」


鴻は心底驚いていた。


〝戦人〟同士の戦いは死闘が常、なので大した理由がないならお互いにデメリットが大きすぎるので避けるのが普通である。〝戦人〟同士の喧嘩ただのなんて起きないのだ。


なのに少女は鴻が普通ではないのが分かった後も追撃をしかけてきた。

まだ〝戦人〟と確信はしてないにしろ、少し短絡的だ。


「いや、俺は助けに入ろうと思っただけなんだけど――」


「はあ? あんな殺意撒き散らして助け? はっ! 笑わすな!! あいつ等の仲間やろ? 追ってきたんちゃうんかい!!」


「――追って?」


「あーーーかみ合わん!」


相手を逆撫でないように気をつけたつもりだったが、話はここで終わってしまった。

少女の闘気が先程より膨れ臨戦態勢に。


(とりあえず落ち着かせるか)


経験が生きてきているのか、先程と全く別の選択肢を選び、頭を切り替える。


少女の左足を右足で払い、浮いた所へ左足で後ろ回し蹴り、ダメージを与えるよりも衝撃で距離を取る。


(ふぅ)


少女をふっとばし、一息つこうと思うが、もうすでに少女は立っていた。

ゆっくりと歩きながら近づいてくる。足音が少し楽しそうだ。


「やっぱり……アンタもこっち側か。なら幹部の可能性もある訳やな。なら、このまま帰る訳にはもういかんな」


その場でリズムを刻み飛び跳ねる。

少女の足元から可視化された闘気の煙が放たれた。


途端、裏路地の陰湿な空気が切り裂かれるように変わる。


「君は一体?――なんなんだ?」


何故、こんなに好戦的なのか。一体何があって、誰に追われているのか。 


西院高校さいいんこうこう1年、桃園ももぞの 夏鈴かりんや! もし記憶が残ってたら思い出す度に震えれや!」


「えっ……いや、個人情報ガバガバだな――」


「記憶と一緒に脳みそをぶっとばしたるわぁぁーーーー!!!!!!!」


温度差がありすぎてまたもや会話は不成立。


地面を蹴り、飛び掛って来る夏鈴に鴻は

転がっていたゴミ箱を投げ、逆にこちらの攻撃範囲に距離を詰めゴミ箱と夏鈴の体をまとめて蹴り付ける。

今度はダメージを与える為の蹴り、ゴミ箱を真っ二つにし体に到達するが両手でガードされる。

足をすぐに戻しガードの上から掌底を打ち、衝撃で夏鈴がよろめいたのを見て

顔面への右ハイキックで決めにかかるが


「――お前らなんかに負ける訳にはいかんのや」


夏鈴が悲しげに呟きながらスウェーで避ける。

追撃で後ろ回し蹴りをくらわせようとするが、それもバックステップで避けられ

カウンターで夏鈴が踏み込み、腹部への殴打。

左手でガードし、すべり込むように前へ詰め、襟を掴み背負い投げにかかったところで


背中が爆発したような衝撃を受け

前のめりでふっとんでしまった。


「おいおいおい――――本気かよ!?」


慌てて起き上がろうとすると空から夏鈴が降ってきた。


「〝赤光ノ鬼絶(しゃっこうのおにたち)〟!!」


凄まじい闘気を放ち、赤く光る刀を振りかざし、叫びながら。

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