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救いのない世界にドロップキック  作者: 星鴉ゆき
第二章 存在するとは、行動することである
18/22

15話 暗雲

「――落日っっー!?」


タマゴサンドを頬張りながら旭が唾とタマゴを飛ばす。


「お、いおい(ムグムグ)おい、その仕事 (ムグ)大丈夫、なの(ムグ)か?」


「まず口の中を無くせ」



『ハムハム』


『モグモグ』



今日は金曜日で、生徒会の集まりがある。よって未羽が鴻を襲撃に来なかったので、時間に余裕ができた四人は、誰が言う訳でもなく春風が気持ちいい屋上で昼食を取っている。


珍しくアイリスが仲間にいるが、未羽が来ない金曜はほぼ一緒にいる。


(ムグムグ……ゴクゴク)


「っはぁー。で、それ大丈夫なのか? 落日って確か世紀末な場所だったよな?」


「いやそこまでひどくはないよ」


「確かに裏路地に入ればホームレスとかもいるし、治安は良くはないけど」


「ヒャッハーって棘が付いた髪形の人が襲ってくるんでしょ!?」


「いや、棘は髪型に組み込まない」


『ハムハム』


アイリスは食事をしている時は喋らない。彩りの豊かなお弁当を

小さい口で上品に食べながら、頷いている。


「簡単な仕事だから問題ないと思う」


「まてまてまて、簡単な訳ないだろ? 落日だぞ? 裏社会の中心とも言われる所だぞ!?」


「おじいさんに変装した危ない人もいるんだよきっと!」


旭が右手にカツサンドを持ちながらすごい形相でまくし立て

夏輝がどこで仕入れたか分からない知識を披露する。


静かに、それでいて一心不乱に食べていた為、皆より早めに食事を終わたアイリスは

白く綺麗なハンカチで口を拭い、鴻の代わりに答える。


「十七夜が大丈夫って言ってるなら大丈夫なんでしょう。それより旭、さっつきから……唾飛ばさないでくださいます?」


「う、うるせー! すまし顔姫よ、内心バクバクなんだろ? 鴻大丈夫かなーって!」


「なっ!? そんな訳ないでしょうよ!!」


顔を真っ赤にし、目が><となったアイリスのぐるぐるパンチが旭の頭に連続ヒットし

口からブヘッと、今度は食パンのカスが飛んだ。


その姿とアイリスの語尾に笑いながら今度は鴻が答える。


「ま、まあ大丈夫。本当にヤバイ仕事じゃないんだ。俺がどんな仕事をしてると思ってるんだよ」


「――まあ、お前がそう言うならそうなんだろうよ。なんかあっても、無理しなきゃお前ならある程度なんとかなるだろうしな」


「夜じゃなきゃ十七夜が処理できないような事はそうそう起きませんわ。夜はできれば避けなさい」


「おう。夜前には帰る。アイリスもありがとな心配してくれて」


「し、し、心配なんてしてないでしょうよ!?」


「素直じゃないんだから~」


一般人からしたら驚くような会話を日常会話のように終わらせる。


普通科の学生ならまだしも、戦人特別育成学科の鴻達からしたら危機的な状況などそうそう起こらない。それに日常生活で戦人と衝突するような危機的状況なんて事は治安の悪い場所に行ったとしてもまず起こりえない事。戦人候補生だったとしてもだ。


あくまでも近況報告、雑談、鴻達にとっては日常会話の範疇。


その後、他愛もない会話をしキリのいい終わり方をしたところで

ちょうど昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り始めた。


(できれば穏便に終わって欲しいけど、そうはいかない気がするな)


翼から仕事を言いつけられた時に直感で感じた嫌な予感は日を跨いでさらに強くなっていた。


予想と期待の違いに心を落ち込ませながら鴻は屋上を後にした。


次の日の午後、夜見に『夜には帰ります』と告げ

今日もパーカーにキャップというストリートスタイルで外出した鴻は〝落日〟に来ていた。


(さすがに土曜だと人が多いな)


〝落日〟は裏社会の中心と呼ばれ、悪いイメージが先走るが

表側には高級なブディックや、高級レストランなども多く、セレブも集まる街である。


しかし道を外れ、奥に進んだ裏路地はスラム街のようになっており、ホームレスなども多い。

裏社会の人間が多く出入りしており、争い事は日常茶飯事。

しかし夜になると、より闇が強くなり表でさえも、一般人が出入りするなら護衛を付けるのが当たり前な危険な街である。


まだ仕事の時間には早いので、場所確認といざという時の逃走ルートや交戦場所など

必要な情報を集める為に路地裏を徘徊していると


鴻の耳に進行方向から怒声が聞こえた。

目に入る範囲まで来ると裏路地の中でも、もっと暗い、雑居ビルの間で女性一人を男が囲んでいた。


(同い年くらい……女の子がこんな所まで入ってきたのか?)


勘という物は経験から導き出される結果である。

同じような出来事を記憶の彼方から無意識に引っ張り出し照合する。


鴻の勘は悪い方では良く当たるのであった。

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