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プロローグ
暗闇の中に血しぶきが舞う
暗いからだろうか、思っていたよりも黒い血
体が動かない
目が眩む
唇は震え、声は出ない
しかし頭は何故か冷静で、普段よりも冷静で
目の前に起こっている出来事を冷静に捉えていた
月明かりに照らされた人影が凄まじい速度で動き回る
肉が裂けるような音や、鈍い剣戟音、怒声、悲鳴が駆け巡る
飛び散る血が目にかかり、咄嗟に目をつむる
少しだけ瞬きをし、大きく目を開けた瞬間ふいに目の前が赤に染まった
綺麗な赤
鮮血
鉄臭いような生臭いような匂いが鼻の奥を通った瞬間
胸の奥がズキッと痛みを発した
呼吸が止まる程の激痛で蹲る
直後、月の光さえもさえぎる暗闇に囲まれる
助けは来ない
勇者も救世主も英雄も
助けに来ない
目の前が黒に塗りつぶされた