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不公平からの脱却

興味を持っていただきありがとうございます。

あらすじでも書きましたが、このお話に出てくる人物、団体は特定の誰かを指しているわけではありません。あくまでお話になります。


読まれていて、文章がひどくてイライラってなられた方はすいません。甘めのお菓子を食べていただければすっきりするかもしれません。

「・・・よって我々は、すべての人々が、老若男女問わず、平等で、安心して、暮らせる世の中を、、、」


 午前の遅い時間。声高々に己の理想論を拡散する音に起こされた。時計を見るとじきにお昼どき。昨日遅かったからか頭がぼーっとしていて夢うつつのようだ。

 うん。これではいけない。そう思い顔を水で洗うことにした。今日という日が世の中の変わり目。未だに外でうるさく騒いでいる空想家にため息を吐き。このマンションを借りたことを後悔した。駅もコンビニも近いけど、こんな騒音があるなんて思わなかった。まぁ、、、もうしばらくの辛抱。

 本日、日本時間、22:00より、我々「メンバー」はこの世の中を一度破壊し、平らにする。


 サカグチは日本のそれなりの家庭に生まれた。特に人より苦労が多かったわけでも楽をしてきたわけでもない。ただ普通に生きてきた。得意なことも苦手なこともある。嫌いなものはこんにゃくで、好きなものは餃子だ。某チェーン店の餃子カードのポイントがいっぱい貯まっている。

 彼の今の仕事は在宅のプログラマーだ。別に会社勤めが嫌だとかではないらしいが、気楽にできて、合っているらしい。それゆえに家にこもっていることが多い。腹の虫がなった。サカグチは、そろそろお昼にするかと思い、冷蔵庫を開けるが何もないとわかると仕方なく近くのコンビニへと向かった。弁当を選び、レジで温めてもらっていると店の外に小汚いおじいさんが自転車に空き缶の袋をいっぱいつけて一生懸命にこいでいた。その横を深緑色をした高級車がクラクションを鳴らしながら通り過ぎていった。

 別段なにもない風景。温め終わった弁当を手にして家へと帰る。飯を食ったらもう少し寝よう。そして起きて、チェックして、それから、、、22時が楽しみだ。そう思うと先ほどまでうるさいと思っていた声が少し遠くなったような気がした。


 最終調整会議には全員出席、時間厳守でお願いします。特に「3」と「4」は遅刻がひどいから注意してください。

 メールにはそう書いてあった。予定よりも10分部屋に入ると「6」が既に来ていた。早いんですね、と聞くとわくわくして待ってられないとのことだ。わからないこともないが大したことではない。普段と同じことを同じようにするだけ、問題はこの後だというのに、、、きっかり2時間前。メンバー全員が集まりリーダーの「1」からはこれが最後ではない、気を引き締めてしてほしいと通達があった。あとは各人の調整と不安要素が無いかの洗い出し。そうこうしているうちに良い時間になる。


「誰一人欠けてもここまで達成することはできなかっただろう。あと少しだ。みんなでやり遂げよう。」


 リーダーの言葉を最初に皆、各々の言葉でお互いに激励し出ていく。いい仲間だなと思う。やがて、リーダーと僕だけになり、ずっと聞きたかったことを聞いた。


「これで世界は変わると思う?」


 それはこの場において興ざめな、意欲を削ぐような質問だったに違いない。けどリーダーは力強く、確実に変わるさと言ってくれた。だから、僕は僕のできる事を精いっぱいしよう。そう決めて最後にグッバイと言って部屋を出た。


 サカグチはチャットルームから出ると冷たい麦茶を飲み、喉を潤した。テレビをつけると21時そこらのニュース番組が流れていた。直近に控えている選挙の動向をあれやこれやと物申している。そんなことしても何も変わらない。人が変わろうと、政権が変わろうと大きく変わることはない。いや、変えることができない。リスクが大きすぎるから、そんなの誰も期待していないし、望んでもいない。だからこそ、変えよう。そう思ったのだ。。。

 牛乳とコーヒーが1:1のカフェオレをグラスに注ぎ、パソコンの前に座る。22時の30分前。テレビは付けたままでいい。

 

 9:50・・・テレビに不可解な映像が流れた。各社テレビ局は騒然とした。全局全番組がその映像を放送している。現場には怒号が飛び交い、消せ、切り替えろ、止めろと指示が出されるが作動しない。。。完全に支配されてしまっているのだから。

 放送された内容は文面だった。


「これより、世界を平等にする。」


 この一文のみ。新手の新興宗教のような文句だが、この放送が10分間続いた。10分後、22:00ジャストに「実行完了、あとはどう生きるかで未来は決まる。」とやはり意味のわからない文面が流れ2,3分ぐらいで放送は通常に戻った。戻ったが、各局にはクレームと状況説明の電話、メールが殺到し、各局は警察へ連絡、警察は影響の大きさから対策本部を設立し、事件の真相究明、犯人の特定、逮捕へと乗り出した。選挙の話題なんぞひとかけらも顔を出さなかった。

 インターネット上には各々の推察、妄想が書き上げられていた。どこかの国がしたサイバーテロであるとか、狂ったハッカーの起こしたよくわからない事件だとか、俺がやったとかetc・・・

 そうして、日付が変わるごろに新たな事実が発覚する。

 この事件、世界中で同一時刻に同じ内容で行われている。

 この内容には多少なりとも背筋が凍るような気分をした人が多いだろう。意味不明な内容を世界規模でするような狂った技術集団。警察による調査は日を超えても続いていた。。。

 

 次の日の朝一番に飛び込んできたニュースは目を疑うようなものだった。

 ”金融機関、証券取引場でのシステムの停止” ”全世界的に経済がストップ”

 なんのことだかわからないが、とりあえず銀行が止まってお金が下せない。あぁ、困ったな、こんなことならもう少し下ろしておくべきだった。それにしても、こんだけ騒いでいるのなら今日は会社は休みかなと少し期待した。

 

 あの事件から2日たった。どうやらシステムの復旧は絶望的らしい。お金が少なくなってきたのだがどうすればいい。銀行に行ってもお金が出せない。徐々に物の値段も上がってきているような気もする。このままどうなるのだろうか、、、


 とりあえずうまくいった。あとは個人で持っているお金さえなくせばみんな同じステージに立てる。現代人が貨幣というツールがなくしたとき、どうするのか、対価を何で支払うのか、何かと交換するのか。。。一度、成熟し円滑に回っているシステムを捨てることは難しい。貨幣の代用となる何かを作り出すのか、貨幣制度そのものをやめてしまうのか。


 事件の犯人たちはまだ捕まっていないが、事件の翌日に各国のトップにこんな文章が届いていた。


 「それでも、経済を回すのか。資本主義に溺れ続けるのか?生まれた瞬間から存在する不条理な格差。そんなものを作り上げてきてのうのうと生きている自分たちが気持ち悪くなった。そのために今回世界中の金融、経済に関わるシステムをすべて破壊した。多く持てば持つほど有利なお金は無い。信用という空虚な錬金術である証券取引所もない。さあ、、、盛大に壊したんだ作り直してくれ。」

 そこには、国も年齢も性別もばらばらの9名の署名がされていた。そのうちに捕まるだろう。

 ふと、窓の外を見るとおじいさんが空き缶をたくさん抱えて自転車を一生懸命にこいでいるのが見えた。おじいさんは知っているのだろうか、その空き缶がお金に変わらなくなるかもしれないことを。

お読みいただいてありがとうございました。


私なりに資本主義とか貨幣通貨制度とかは普段の生活で当たり前すぎてピンとこないんですが、金融商品を生み出した人は凄いなと思っています。

作中にも書きましたが、不定形のものから価値を生み出すって錬金術って感じですよね(笑) 魔法みたいでとても興味を惹かれました。


実際に貨幣制度がつぶれちゃうとおいしいお菓子も簡単に食べれなくなってしますので困っちゃいますけど・・・それだけはご勘弁いただきたい。


それでは、また、不定期にあげます。

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