#01 旅の始まり
「起きたか。此処は屋敷の近くの村だ」
「ちょっと!カイオン、優しく言いなさいよ」
横で門番とメイドが話している。俺は門番に怪物の事を聞いた。
「…倒せてない。ドラノとお前だけ連れて逃げろってお嬢様に言われて……」
「…そうですか。にしてもすいません。こんな旅人を助けて貰って」
頼斗が居なければその”お嬢様”と一緒に彼らは逃げれたかもしれない。そう思って謝罪すると門番が、
「なら、付き合ってもらうぞ」
そう言って門番は一冊の古びた本を差し出した。本には筆に近い何かで『仙士斗鬼弐津井手』と書かれていた。恐らく当て字だろう。そう思って本を捲る。すると其処には先程の怪物に酷似した鬼と書かれた怪物と、それに立ち向かっている角の生えた『仙士』と書かれた男が戦っている様子が描かれていた。
「これは極東の地でテルナー様…屋敷の大図書館の司書が発見した本です。この本によれば仙士とは妖や妖精などと人間が融合した崇高な戦士であり、世界を食らいつくそうとする『鬼』と戦う存在であるそうです…。私とカイオンは極東の地に出向き、その仙士を探しにいく予定です。旅の方も、もしよければ…」
苦し紛れにメイドが聞いてくる。別に嫌では無いが、能力と言うのや魔法的なのが使えない俺は役に立たない。なのに付いて行けば邪魔になる。そう思っていると門番が、
「能力とかなら判定出来るぜ。ちょっとでこ貸してくれ」
そう言って門番は俺の額に手を当てる。しばらくすると、門番は驚いた顔で俺を見た。
「ウッワ…チーターやチーター!」
「いや何が?」
俺が呆れ気味に聞く。門番は、
「能力だよ!能力!創造と破壊、そして妖精王専用能力の神槍!無敵だよ!あ、能力の説明するな。まず創造は…」
こうして門番の能力講座は夜明けまで続いた…
◇ ◇ ◇
翌朝。村の宿屋を俺達三人は出発した。カイオンとドラノは仙士を探しに、そして俺は先代妖精王に会う為(あと仙士を探す為)、長い長い道を歩き始めた…