1/1
8話
日が落ち、すっかり暗くなった部屋で一人、永井一毅は群馬旅行の時のアルバムを見ながら涙を流していた。
医者には見込みはないと言われ、助けるすべもなく、ただ「病」に苦しむ妻に、私がしてあげられるのは妻の側にいてあげる事だけだった。
それでも、病院から一人帰宅すると、寂しさと悲しみが込み上げてきて「何故、私の妻なんだ」と叫びながら物にあたっては、気持ちを落ち着かせる為、酒に没頭しながら、妻との思い出のアルバムをこうして暗い部屋で開いては、かつての過去が頭の中で忠実によみがえり、涙を流す……そんな日々が続いていた。
助けるすべも、手がかりもなく、唯一の希望は手がかりらしいものだけ
私は彼が話す「奴」の情報を得ると、それ以上は彼とは話さなかった。
彼も、目的を果たしたかのように、あれ以来私に話しかけることもなかった。