2.古い友人。
幼馴染の突然の手紙から、俺は取りあえず小学校の頃の古い卒業アルバムを引っ張りだしてみることにした。引っ越しする際に荷物になるからと言って持って来ようか迷ったアルバムだったが、持ってきていて大正解だった。埃を被っていたアルバムを床に広げて自分のクラスのところを一番に開いた。
「うわ、懐かしいな、これ」
そこには自分の友人たちの幼顔が沢山並んでいた。みんな満面に笑みを浮かべて凄く楽しそうにしている。田舎の学校だったということもあって、無邪気に外で遊んでいたのを思い出す。
「お、アンナじゃん。懐かしいな~。うわ、俺めっちゃ幼いな!」
独り言で妙に盛り上がってしまった。順番にページをめくっていくと、記憶の奥底に眠っていた名前が次々と飛び出してくる。
<三原亮>
「リョウじゃん。グループ一番のやんちゃだったなー」
<七原明美>
「アケミはしっかりしてたなー。すごい頼りになったもんなー」
<大山連太>
「レンタはスポーツ万能で、女子からちやほやされてたイケメンやったな」
これでグループ全員の名前は分かった。後は、連絡を取るだけとなった。アケミとリョウは中学まで、レンタに関しては高校まで一緒だったから連絡を取るのは容易だった。
「取りあえずレンタに連絡するか。ラインも最近までしてたしな」
俺は携帯を取り出すと、連絡先からレンタを呼び出して電話をした。メッセージを送るだけでいいかとも思ったが、あのアンナからの突然の手紙だ。興奮収まらない俺は、迷わず電話した。
「もしもし?」
「おお、ユウタじゃないか。久しぶりだな。こんな真昼間にどうしたどうした?」
「お前、アンナって覚えてるか? 小学校の頃の幼馴染のさ」
「また凄く懐かしい名前が出てきたな~! 覚えてるさ、もちろん。小6の時に転校したよな?」
「そうだよ! そのアンナからさ、さっき手紙が来たんだ」
「ほぉー。それは本当か?」
「ああ。ざっと手紙の内容を要約するなら、昔のあのメンバー集まりたいとさ」
俺は気づかない間に興奮しながら話していた。さすがにレンタも俺に少し引いていた。
「お前、元気だな……」
「あ、悪い悪い。一人で舞い上がってしまった……」
レンタはいつもの声で笑った。高校を卒業してまだ数か月だというのに、もう遠い過去のことのように思ってしまった。人の思い出の風化というものは早かった。
「それで? 俺たちは夏に再会するってわけか。他の奴とは連絡取れたのか? ──ほら、リョウとか」
「いいや。レンタがメンバーの中で最初に連絡したんだ」
「そうか。俺は中学の時にリョウとは連絡先交換してるから俺がしておこうか?」
「それは助かるな。アケミは後々考えることとしようか」
「そうだな」
そうしてレンタとの電話を切った。心の中が期待と不安の渦で興奮していた。あいつらに会える。また、あいつらと再会できると思うとと楽しくて楽しくて仕方がなかった。
こうして、俺の夏は始まった。