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ラグナロク  作者: MIKON
過酷な現実
8/16

故郷に

いろいろあって遅くなりました、すみません


 バラバラと轟音を立てて、遂に私たちは日本に到着した。

 隕石の衝突によって移動したらしく、太平洋の真ん中ぐらいに日本はあった。

 周りは巨大な外壁に囲まれていて中の様子は全く分からないようになっていた。

 そして、外壁の南方面にHと書かれていた場所があった。

 どうやら、そこが着地地点のようで、そこまで降りると一人の黒髪の兵士が銃を片手に外壁の中の入り口みたいな扉を開けて現れこう口にした。

「ここに何のようだ」

 顔は黒い布で隠れててわからないけど、声からして、女の人そうだ。

「あ、あの……中に、いれて、もらえないでしょうか?」

 ケツァールさんはそう兵士に問いかけると「ここは子供しはいれない」と断った。

「い、いえ……私ではなく、彼女たちを」

 そうケツァールさんは私たちを目差して言った。

 兵士は私たちは見て少し黙り込んだ後、口を開いた。

「………いいだろう。少し待て」

 そう言い残して、兵士は扉を開けて中に入った。

「やったね! 春ちゃん! 入れそうだよ!」

 私が歓喜をあげると、春ちゃんも「そうね!」と喜んだ。

「しかし、武器なんて持って物騒だな~」

 そうノリが言うと、ケツァールさんは「仕方ないことだよ」と言った。

「そうですね……ここはいわば最後の望みなわけですし、武器をもってここの入り口を強行突破するのもありえますしね」

 私が思ったことを言うと「さすが! 頭いいね~!」と褒めてくれた。

「い、いや~そ、そんなことは~」

 私は案の定照れてしまい、顔が赤くなった。

 まあ、とにかく入れそうで良かった~。


         ★


 トゥルルル

「何だ? ………そうか、見せろ」

 パッ

「………!! くくくっ……こいつは面白い……」


          ☆


「あっ……」

 ものの数分もしないうちにさっきの兵士がやって来た。

「ど、どうでした?」

 ケツァールさんが心配そうに兵士に聞くと「通して言いそうだ」と答えた。

「やった!」

 私がまた喜んでいると、兵士が「但し!」と少し声を大きくして言った。

 そして段々私の元に近づいてくるのが分かった。

「えっ?」

 そして、遂に兵士が私のまん前に立つと無表情で残酷なことを兵士は口にした。

「但し、この子は入れない、それでもいいなら入れてやろう」

「「!?」」

 その言葉で私はもちろん、周りのケツァールさん、春、そしてノリまでも驚いた。

「ど、どういうことですか!?」

 ケツァールさんは兵士に詰め寄ると「上からの命令だ。逆らうか?」と兵士は少し銃を強く握り締めた。

「うっ……」

 ケツァールさんは兵士の意図が分かったのか後ずさんだ。

 もし全員で通りたければ血を見ることになるぞって意味かな。

 ……でも、私一人で二人が幸せに暮らせるなら別に安いものよね……。

 ……よし!

「いいよ、別に」

「ぼ、ボロちゃん? 何言って……」

「私一人で二人が助かるならそれで…」

 私が言い掛けると、春ちゃんが私の頬を叩いた。

「……っ!」

「ワオ!」

「そんなこと言わないでよ……! 直人さんが言った言葉忘れたの!? そんなことしても、私たちも、直人さんも……! 嬉しくないわ!」

 春ちゃんは涙を流しながら私に問うた。

 ……そうだ。

 直人さんは言ったじゃないか。

 「2人とも生き延びろ」って………。

 まったく、ふたりともなのに、私が犠牲になっちゃうんじゃあ元も子もないじゃない。

「……ごめん。私ったら、何言ってたんだろう」

 そう、私一人犠牲になって2人が助かっても、直人さん、それに春ちゃんが喜ぶわけが無いんだ……やめよう……。

 私は春ちゃんに目を合わせてると、春ちゃんは悟ったかのように小さく頷いた。

 次にノリに目を合わせると、ノリも少しため息を付いたけど小さく頷いた。

「2人とも……ありがとう!!」

 私は泣かないと決めていたけど、こんな時は……良いよね?

 私は2人に抱きついたあと、暫し「ありがとう」と言いつづけた。

 本当に、私なんかのために……ありがとう。

「で、決まったのか?」

 ムードを壊すように兵士がそう言って割り込んできた。

 まあ、決まったけど……。

「はい……決まりました!」

 私は改めて二人の顔を見ると、二人ともコクッと頷いた。

 それを見て私は改めて決心し、無表情の兵士に向かって答えを口にした。

「私は二人と一緒にいます! だから入りません!!」

 例え危険な場所にいても、辛い事になっても、きっと三人なら、乗り越えられる!

 だから……私たちに理想郷はいらない!!

 そう決意を込めて私は力強くそう言った。

 兵士は少し沈黙した後、少し笑った。

「えっ?」

「ふふっ、気に入ったわ!」

 そう言って銃を地面に落とした後、顔を隠している黒い布を取った。


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