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ラグナロク  作者: MIKON
故郷を目指せ
6/16

到着


「くう~~!! 三日経ったぞ!! まだ見つからんのか!!」

 男の苛立ちは頂点に達していた。

 もう、誰かが殺される。

 それは誰もが分かっていた。

 前のように……。

「くうっ!! お前だ!! こっちにこい!」

 その死の宣告を受けた人物は、あの春とボロを逃がした青年、直人だった。

「はあ……分かりました」

 直人は深いため息をついて、男の前に立った。

 これは罰なのだろうか?

 いや……俺一人の命であの幼い二人の命を救えたんだ……天国のあの二人も納得してくれるだろう。

「座れ!」

「はい……」

 ……少し早めだが、お前たちに会えるよ……。

 約束は守れなかったが……代わりにもっと大事なものを守れたよ。

 ……生き延びろよ、二人とも。



「つ、着いた~~!」

 私は目の前のサン・イシドロ san lsidro de EI GeneraIと書かれた標識を発見して安堵した。

「しかし、着いたはいいけど、本当にいるのかしら? ケツァールって人」

「でも、それに賭けるしかないですよね」

「そうね……それじゃあ、早速入ってみまっ…っ!」

 春ちゃんは入っていく途中で急に後ずさんだ。

「えっ? ど、どうしたんですか? 春…っ!!」

 私は春ちゃんのいる所まで行った瞬間、目を疑った。

 その光景は、周りに人の死骸が埋葬されることなく散乱していて周りの建物も、ただの廃墟と化すように壊されていた。

 それは今が戦時中だということを嫌がおうにも実感させる光景で私は見た瞬間、強烈な吐き気に襲われた。

「うっ!」

「ぼ、ボロちゃん!? だ、大丈夫!?」

「だ、大丈夫……」

 そうだ。こんなことで吐いたりなんかしてる場合じゃあないんだ!

 常に冷静にならないと! 私も春ちゃんみたいに!

 私はそう心で再び決意し、吐き気を押さえ込んだ。

「ふう……」

「だ、大丈夫? 本当に?」

「うん! 私、すこしは成長しないと!」

「ボロちゃん……もうあなたは成長しているわよ!」

「えっ? そ、そうですか?」

 私が軽く照れると、春ちゃんは「そうよ!」と少し笑みを浮かべ言った。

「……あっ、そんなことよりケツァールさんを探さないと!」

 私が当初の目的を思い出すと、春ちゃんも「そうね!」と答えた。

「でも……いるんでしょうか?」

 私が早速弱音を吐くと、春ちゃんは「とりあえず、辺りを探しましょう」と答えた。

「そうですね」

 私は肯定して「ケツァールさん居ませんか~?」と大声で叫んでいるのだが、あることに私は気付いて立ち止まってしまった。

 そういえば、私、コスタリカ語話せなかったんだった!

「ど、どうしたの? ボロちゃん」

「……私、コスタリカ語話せないんでしたよね?」

「え? ええ……あっ、そういうこと」

 春ちゃんは私が言いたいことが分かったらしく「大丈夫よ。大声を出してれば、誰だって来るわ」と言った。

 その言葉に勇気付けられた私は「はい! 分かりました!」と返事をし、また叫び始めた。

 そして、それから数分後。ようやく男の人の声が聞こえてきた。

 もちろん、何を言ってるのかは分からない。

 春ちゃんは「少し待ってて」と言ってその男の元に行った。

 そして、話し終えたのか、春ちゃんは私の元に走ってきた。

「は、春ちゃん! ど、どうだった?」

 私が心配そうに聞くと、春ちゃんは少し安堵な表情をした。

 てことは!

「その人、ケツァールさんですか!?」

 私が少し期待気に聞くと、春ちゃんは少しにやりとして頷いた。

「や、やりましたね!! 春ちゃん!」

 私がそう喜んでいると、ケツァールさんが近づいてきた。

 やばい、私、コスタリカ語しゃべれないんだ!

 ど、どうしよう!

 私が少し焦っていると、ケツァールさんは少し笑った。

「えっ?」

「ははっ、大丈夫だよ。僕、日本語話せるから」

 そう丁寧な日本語で私に話した。

「あ、そ、そうですか……」

「うん。それと、彼女から話は聞いてるよ。君たちを日本に連れてってあげるよ!」

「……あ、ありがとうございます!」

 私はこの地獄から抜けられる歓喜の涙を流して頭を下げた。

 直人さん……ありがとうございます!

 私が心の中で直人さんに感謝していると、ケツァールさんが少し気まずそうに口を開いた。

「それは、別にいいけど。直人。残念だったね」

「「えっ?」」

 その言葉に私と春ちゃんは揃って驚いた。

 残念だった?

 何が?

 ま、まさか……私たちを逃がしたのがバレテ追放されて………あっ!! あれからもう三日経ってる!! ま、まさか………!

「あ、あの……ケツァールさん。残念って……まさか……」

 私が恐る恐る聞いてみると、ケツァールさんはゆっくりコクッと頷いた。

「!!」

 やっぱり……こ、殺されちゃったんだ………わ、私のせいで!

 あまりにも残酷すぎる現実に、私は涙を流して嘆く事しかできなかった。

 


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