緊迫
☆は視点が変わるときに出てきますので突然第三者視点になっても気にしないでください!
「おい! まだ見つからんのか!」
強面の男の苛立ちの篭った声に、周りの兵士は焦っていた。
なぜかと言うと、それはこの強面の男は、気に入らないことがあると、腹いせに誰かを、持っている大剣で処刑するのだ。それこそが、唯一、彼の気が治まる方法だった。
だから、その苛立ちが頂点に達する前に、食糧庫から缶詰を大量に盗み出した者を捕らえ、その人物に死んでもらわなければ、代わりにここにいる誰かが死ぬことになる。
それが自分かもしれないという恐怖がさらに周りの男たちを焦らせていた。
「くそっ! おい! あと3日だ! 3日以内に盗み出した奴を俺の目前に連れて来い! でなければ、お前らの内誰かを殺す! 分かったな!」
その男の声に、周りの兵士は「はい!」と少し怯えた声で答えた。
☆
「よいしょっと」
私が唯一の荷物である缶詰入りの袋を持つと、心配そうに春ちゃんが「私が持とうか?」と聞いてきた。
「いいですよ、これくらい。それに、まだ腹の傷が完全に癒えたわけじゃあ無いんですし、ここは私に任せてください!」
私が笑顔でそう言うと、春ちゃんは「ありがとう……」と少し涙を浮かべて言った。
少し照れちゃった私は「そ、そろそろ外に出ませんか?」と背中を向けて言った。
その言葉に春ちゃんは涙を少し拭いて「そうね」と答えた。
そして外に出た私たちは、盗みに入った軍と反対方向に歩みだした。
☆
「はあ……」
男は盗みに入った泥棒を捕まえるため、敷地外で捜索しているのだが……。
「何で、ここに入ったばかりでこんな目に……」
そう、この男はまだこの軍に配属になったばかりの新人だった。
「入ったばかりで盗みが入って、入ったばかりで上司に殺されるかもって、一体何なんだよ、俺の人生……」
そう男が憂鬱な気分で歩いていると、暗い夜の中で一つの潰れた病院が目に入った。
「まさか……な」
いやっ、ここは一度戦闘が終わった場所……隠れるには絶好の場所だ。
態々、一度終わった所に兵士を行かせても無意味だしな……。
行ってみる価値はあるな。
そう思い立った男は病院に向けて小走りで向かうと、二つの影が見えた。
「おっ、ビンゴ! これでなんとか、殺さずに済む!」
そう男は心の中で安堵しその人影を追った。
☆