決意
「うっ……」
私がまた暗闇から目を覚ますと、春ちゃんの泣いている姿が目についた。
「あっ、ボロちゃん……気が付いたの……」
明らかに声のトーンが下がってる……それに、ここは……あの地下……ってことは。
「灰香さん……行っちゃたんですね」
私の言葉に、二人は静かに頷いた。
……また、死なせちゃった…………くっ!
「こんな所で泣いてたって……!!」
そう、もう泣かないって決めたんだ!
でも……!
何で……?
何で……涙が……止まらないの?
「ボロちゃん………」
「…………また……私のせいで……!」
「それは違うわ……!!」
「は、春ちゃん……?」
「貴方だけのせいじゃあないわ……! 私だって! あの時灰香さんを止めていれば……!」
春ちゃんは涙を流しながら自分を責めた。
そうだ、私だけが悲しい思いをしているんじゃあないんだ……。
春ちゃんも……ノリ君も……自分のせいだと責めて悲しんでいるんだ……。
私だけが……自分を責めているんじゃあないんだ……!!!
私は思いっきり自分の頬を叩いた。
「!? ぼ、ボロちゃん……!?」
甘ったれてちゃあ駄目だ……!!
しっかりしないと……!!
だから……こんな所で泣いていられない!!
私は再度意志を決め、目から出た雫を手で拭いた。
「ぼ、ボロちゃん……? だ、大丈夫?」
「うん……! もう、大丈夫……!」
★
「総統……ご命令通りこの女を殺しました」
「そうか……よくやった」
「では……!! 見逃してくれるんですね!?」
「誰がそんなことを言った?」
「えっ……」
「雇ってやるとは言ったが、誰もお前の行為を見逃すなど、一言も言ってない」
「そ、そんな……!! ……くっ、だ、騙したなぁ!」
「亜利好」
「はっ……」
「は、離せ!!! くそ!! お、覚えてろ!! 久遠薜!!!」
「ふん……」
☆
「……さて、これからどうする?」
そう切り出したのはノリ君だった。
「そうは言っても……食料は足りてるし……することと言えば見つからずに過ごす事ぐらいしか……」
確かに、春ちゃんの言っている事は正論だ……だけど、私は……灰香さんの敵を討ちたい……!
灰香さんを……そして私たちのような子供を洗脳して戦争に送り込むなんて非道なことをしているその久遠という人に……!!
でも……どうやったらそんなことが出来るの……?
私達は何にも力がなくて無力な存在……どうやったら、敵を……。
私は一度、頭に置かれている情報を整理することにした。
そこで、あることに気がついた。
日本は何故、隕石が落下していたにもかかわらず、ほぼ無傷だったの?
落下する所は遠くにしているから多少は被害が無いけど、それでも無傷じゃあすまないはず……現に日本は輸入にほとんど頼っていたんだから……ということは、無傷なわけがあるということ?
例えば、食料を無限に作り出せる機械とか?
でも……そんな夢みたいなことが…………。
……! で、でも……! そのくらいのことが無いと、わざわざ隕石なんか落とさないはず……!
それにこの技術を他の国々に渡していないとなると……戦争で皆が枯渇になって怯むのを待っているの?
何故……?
「ぼ、ボロちゃん?」
「ふぇ!?」
いきなり話しかけられて変な声が出ちゃった……。
「な、何?」
「い、いや……何かずっと考え事してたから……」
「あっ、ご、ごめん……春ちゃん」
「別に謝らなくてもいいんだけど……それで、何の考え事をしてたの?」
「え?」
「ボロちゃんがあんなに真剣に考えてたってことは、何か打開策を考えていたってことでしょ?」
す、鋭い、春ちゃん……。
まあ、別に隠す必要なんかないしね……あくまで私の予測だし。
「なるほどね……」
「やっぱり、飛躍しすぎですよね……」
私がそう言うと、春ちゃんは首を横に振った。
「えっ?」
「結構……良い発想かもよ? ねっノリ」
「ああ……それくらいのことがないと、日本が隕石落としなんてする理由がないしな」
「そ、そうだよね! それぐらいの物がないと態々資源枯渇とかにしないよね!」
「ええ……でも、それが分かったとしても……私たちには何も出来ないわ……」
「!」
……確かにそうだ……私たちみたいな小さな存在が何かを変えるなんて……不可能に等しいんだ……………でも!
「それでも……今この状況を知っているのは私たちしかいないんです! 例え不可能に等しくても0%じゃあないんです! 1%でも可能性があるなら挑むべきです! それでこそ直人さんや灰香さんが喜ぶんじゃあないですか!?」
私は勇気を出してそう言った。
案の定、沈黙という空気が流れたけど。
「確かに、ボロちゃんの言う通りね……これじゃあ、何のために生き延びたんだか……」
「ああ……確かにそうだ……」
「み、皆……!」
私は嬉しさのあまり涙を流した。
「私たちで……この世界を変えましょう!」
そう春ちゃんは手をかざした。
「……うん、変えよう……こんな世界を……!」
私は春ちゃんの手に手を載せた。
「……ああ、変えてやろう!……俺たちの手で……!」
そう言ってノリ君も手を載せた。
「私たちで変えてやりましょう! こんな世界!」
「「「おお!!!」」」
そう……変えてやるんだ……そして日本の技術を皆に提供させて皆を貧困から救うんだ……!!