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逃走
俺は完璧で、最強になれるのだと信じて疑わなかった。
───世界の英雄が完璧で、最強だった様に。
その考えはあまりにも愚かだった事に、あの日までの俺は気付かない。
△ ▼ △ ▼
某月某日、暖かい光に包まれ目を覚ました。
目を、覚まし、…
目を、覚ました?
混乱する俺の視界に入ったのは金髪に赤目の綺麗なおばさん。三十歳前後だろうか。
「まぁ、起きたのね?じゃあ、続きをしましょうねぇ〜!!」
「うっちぇ、だまりぇおびゃはん。ちゅかだゃれだあんちゃ」
「……あら?」
ん?
おばさんの声と俺の声とが重なる。
「この子…。あらぁ?」
おばさんは大きな目を見開いて俺の頬を手で包み込む。
あったかい…。じゃなくて
「しゃわんなびゃびゃあ」
「っ…!」
誰だよお前は。そういった意味を込めて手を払うとおばさんはさらに目を見開き、
「もっと…、もっとお願い!!」
ぞわっ
頬を真っ赤に染め、嬉しそうに迫ってくるおばさんを見て俺は即座に思った。
逃げないと己の身が危ないと。
だから俺はたまたま近くにあった窓に近寄り、飛び降りた。