死神と英雄
僕は正義にはなれませんでした。
僕は偽善者にしかなれませんでした。
皆を救えるって信じてました。だけど、無理でした。人には人の限界域があってそれを超えることはできないのだと、僕は死ぬ時にようやく悟ったのでした。
僕は子供でした。自分が正義なのだと、僕が正しいのだと思ってたからです。
だから次は、守れる力が欲しいです。
殺す力なんていらないから。だから守る力が欲しいです。
ねぇ神様、いるんでしょう?
僕のお願い聞いてください。
僕が次に生を受けた時は、争いのない世界に生まれたいです。
わがままだって分かってます。だから、お願い。
もうぼくはひとをころしたくない
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優しい風が頬を撫でた。
広大な草原には大きな石碑が一つ。
「ねえ、英雄さん。」
小さな少女は茶色い髪を揺らし石碑に花を手向け、呟いた。
少女の後ろには何人もの子供がいた。
ある者は微笑み、ある者は涙を流す。それぞれの反応を見せた。
「英雄さん。私達は英雄さんに守られた。大人は皆英雄さんを悪く言うけど、私達は知ってるから。だから、」
一歩、少女は前に出て笑みを浮かべた。
「おやすみなさい。」
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子供が帰り、誰も居なくなった草原には、今も心地の良い風が吹き続ける。
優しい風が、子供達を守るように吹き続けていた。
《死神、ノーチェ・ニハーヤ。
此処に眠る。》