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第46話 鑑定士のお仕事2

「ふう、ロナリア。お前俺を過労死でもさせたいのか?」


執務室で頭を抱えながら私にそんな酷い事を言うお父様。


心外ですわ。


「何をおっしゃるのかしら。そのようなこと思うはずありませんわ」


実は先日押収したルグムナ子爵の書類の中に、シャレにならないものが多く含まれていた。


一応私は侯爵令嬢なので当然お父様の指示が必要だ。


まあ、運命の女神の立場で好き放題しても良いのだけれど。

全てに周知しているわけではないので意外と面倒くさい事になる。


「なんだこの狂った内容は。……バカなのか?」


さすが親子ね。

感想が同じだわ。


「お父様?国王様に丸投げで良いのではなくて?何もお父様が悩む内容でもないでしょうに」


実際今回の案件の殆どが中央と地方の小競り合いの延長上のものだ。

王都に近い我が領はほとんど関係に無い話のはずだが。


「フィナリアル領の案件が多く含まれているんだよ。さすがに結婚したばかりのレイナルドに押し付けるわけにもいくまい」


あ、そうだわ。

それにお兄様、まだハネムーンの最中よね。


「あの、ジェラルドさん、俺、何か協力できますか?」


さすが人たらしで優しい俊則。

見かねて声をかけてくれた。


うう、俊則本当に素敵♡


お父様は大きくため息をつきイスに深く座りなおす。


「ありがとうシュラド君。とりあえずは大丈夫だ。ロナリア、お前確かエリス嬢とは仲が良かったよな」


うぐっ!?

まあ確かに。


仲がいいっちゃいいけど。


……あう。

……例の光景が目にちょっと焼き付いているのよね。


「ええ、まあ。……エリス嬢が関係するものありましたっけ」

「うむ。この『ウィザル商会』なんだがな。…確か彼女の名で相当出資しているはずだ。何でも社会勉強の一環らしくてな。この前ドレスト侯爵と狩猟会に行った時に話されていた」


…ドレスト侯爵?

――思い出すだけで、背筋がのびちゃうわね。


「…確証がない状況でいきなり侯爵に伝えるのは避けたいだろ?――お前が直接行くというのなら止めないが」


ぐうっ、それは私も避けたい。


「まあ、見る限り黒だがな。最近王都で大麻草が多く出回っている。まさかゴッズワイ侯爵が絡んでいるとはな。……うう、胃が痛い」


ああもう。

そんなに大量に胃薬飲んではいけませんわよ?


もう少し優しい薬も作ろうかしら。


「俺は他を当たる。まあいくつかは国王に投げるさ。商会の件、頼めるか」

「はい。承知いたしました」


乗りかけた船だ。

何とかしますかね。



※※※※※



「まあお姉さま、わたくしに会いに来てくださるなんて♡エリスは嬉しいですわ♡」

「ハハ、ハ。エリス、元気そうね」


私はルルを伴い、エリスに会うためドレスト侯爵邸を訪れていた。

呼ぼうとしたのだけれどルルが、


「ロナリアお姉さま?話し合いなのですよね。きっとエリス様ここへ来ると話し合いにならないと思いますよ?」


とか言うし。


確かにこの子呼ぶと。

“そういう事”しか想像がつかなくなっている。


私は隣に座っているルルの手を握る。

荒んだ心が落ち着いていく。


ああ、ルルは癒しだわ。


「あう、ロナリアお姉さま♡」


顔を赤らめるルル。

もう可愛い♡


「っ!?ズルいです。わたくしも……」


それを見たエリス嬢も立ち上がろうとしたので。

私はかぶせ気味に大きめな声を出した。


今日はそういう日ではないのだよ。


「あーエリス?今日はお願いがありますの」

「はい?お願いですか?」


「ええ、実は……」



※※※※※



どうにかエリスの協力を取り付けて、タイミングよく今日訪れる『ウィザル商会』との面談に同席する事が出来るようになった。


当然事前に今日来ることはリサーチ済みなのだけどね。

万が一に備え。

実は俊則も侯爵邸の近くで待機してくれている。


暫くお茶を楽しんでいたら、執事が来客を伝える。

どうやら“本命”が到着したようだ。


「お姉さまお見えになったようですわ。ここでよろしいでしょうか」

「ええ、お願いしますわね。わたくし商会に興味があるのよね」

「まあ、さすがはお姉さまです。わたくし色々レクチャーいたしますね♡」


まあ、商会というよりは“あいつらの陰謀”に、なのだけれどね。

エリスに伝えることではない。


(さあて、鑑定するわよ)


程なく訪れた二人の男性。

一人は雇われだが。


一人は中枢の人物だった。


さすがは侯爵令嬢。

繋がりが濃い。


「お初にお目にかかります。わたくしウィザル商会で王都の店長を仰せつかっておりますギルイルドと申します。以後お見知りおきを」


「ご丁寧なあいさつ痛み入りますわ。わたくしウッドストック侯爵家のロナリアと申します。是非ご贔屓にお願いいたしますわね」


ふう。

海千山千。

深い知識と経験。


――隙がない。


まあ、鑑定の前では関係ないのだけれどね。

私はおもむろに鑑定を行う。


「っ!?」

「???ロナリア嬢?どうされましたか?顔色が…」


「う、ああ、申し訳ありません。何でもありませんわ。わたくし今日は見学なのです。どうぞお気になさらず。さあエリス様、商談お続けになってくださいまし」


「はい、ロナリア様。……それでですね、この前の……」



※※※※※



うわー、あり得ない。

何なのコイツら?


危なく我を忘れて暴れるところだった。

どうしてこんな糞みたいな事が出来る!?


子供を実験体にするなんて……


許せない。


証拠を集めてからと思っていたけど。

こんなのを見てしまえばそんなこと言っていられない。


絶対につぶす。


商談が終わるとともに私はドレスト侯爵家を後にし、俊則と合流。

レギウスさんのところへと転移していった。



※※※※※



「ロナリア嬢、それ本当なら王国がひっくり返るよ?」

「ええ、そうかもしれません。でも私絶対に許せないよ」


私の話を聞いたレギウスさんが頭を抱える。

何と国立の幼年学校で、実験体となる子供を調達していたのだった。


そこへ宰相が青い顔で飛び込んでくる。

私の掴んだ情報の裏が取れたようだ。


「女神さまの仰る通りでした。今王国の騎士団がゴッズワイ侯爵家に突入したところです。陣頭指揮には勇者シュラド様がついてくださいました。……ロナリア様、国王に変わり謝罪いたします。――本当に申し訳ありませんでした」


いつもなら私は。

きっとすぐに頭を上げてくださいとかいうのだろう。


でも。

今回の案件は少なからず王の耳には入っていたはずだ。


「宰相。王はどうしました。あなたの謝罪では――私は受け取れません」

「っ!?ロナリア嬢?……それは…」


「いいえ、レギウス様。女神さまの仰る通りです。今回の件、王にも責がございます。今指揮をしております。終わり次第こちらへ参上いたします。どうか、ご慈悲を」


私は大きくため息をつく。


実際に今回の件を仕切っていたのは王ではない。

ゴッズワイ侯爵だ。


だが書類には。

すべて王の印が押されていた。


確かに一目見てそれとわかる内容ではない。

しかしあの有能な王が全て見落とすとは私には思えなかった。


何かある。

私は確信していた。


「宰相、必ずあなたも来てください。俊則が帰還したら謁見をお願いいたします。必ずです」

「はっ、仰せのままに」



※※※※※



「舞奈、お疲れ様……おいで」

「っ!?うん」


陣頭指揮をこなし無事ゴッズワイ侯爵を捕らえた俊則は。

王宮の高級な控室にいる私の元へと真っ先に来てくれた。


そして一目見て疲弊している私を気遣い今腕の中で癒してくれている。


「俊則っ、好き、大好き」

「うん、舞奈…可愛い」


私たちに言葉はいらない。

抱きしめてもらうだけで勇気が湧いてくる。


(ああ、本当に俊則に会えてよかった)


「舞奈…大丈夫?俺がケリ付けるよ?」


「ううん。ありがとう。でもこれは多分私の仕事だと思う。“鑑定士”としての仕事」


「そっか。ははっ、舞奈は偉いね。ほんと尊敬する。そして誰よりもかわいい俺の愛する人だ」


もう俊則。

普通にそういうこと言うし。


もう、好きすぎる♡


そうだ。

これは私の仕事。


シナリオを壊した私の責任でもあるんだ。

だから確実にケリをつける。



※※※※※



実は今回の事件。

相当根深く、前回ほどではないにしろまた王国に激震が走った。


シナリオなのか運営や開発陣の計略なのかは分からないが。

今回の事件に関与していた貴族の多くと、なんと国王と宰相までが悪神の影響下にあった。


流石に王と宰相は古来より展開している王宮の結界があったのでそこまでおかしくは成っていなかったものの。


細かい確認に対する不備。

感情の起伏が激しくなるなどの不調を抱えていた。


放って置けば、決定的な破滅に繋がる案件。


――ナイス私。


どうやら救えたことに、一応の満足感を得る事が出来ていたんだ。



※※※※※



取り敢えず一通り仕事を終えた私は今自室で俊則と二人で過ごしていた。


「どうりで。あの王様何気に優秀なのよね。だから私違和感を覚えたの」

「そっか。もう大丈夫なの」


「うん。みんな解呪したよ。まあこれでもうシナリオとかに振り回される事はないと思う」


結果として芋づる式に多くの弊害が改善された。

もう攻略対象で問題のあるものは“3馬鹿以外”いなくなっていた。


私はほっとしたせいか。

無性に俊則に甘えたくなってしまう。


抱きしめて欲しい。

――キスしてほしい。


「ねえ、俊則……」

「ん?」


「んっ」


私の行動に気づいた俊則が、優しく私を抱きしめキスを落としてくれる。


暖かい彼の唇。

私は疼いてしまう。


「んっ」

「ははっ、可愛い。ああ、舞奈、大好きだよ」


ああ、溶けちゃうよ。

もう、このまま……


(…エッチも――したい)


俊則は私を優しく抱いてベッドへと連れて行ってくれる。

私は聞こえるんじゃないかっていうくらい


心臓がドキドキしていた。


「かわいい。舞奈、愛しているよ」

「うん♡」



「ちょーっと待った!!!」



いよいよ彼の唇が私に触れそうなタイミングで突然ドアが開く。

ルルと絵美里が部屋に飛び込んできた。


「もう、ロナリアお姉さま、ズルいです」

「舞奈さん?約束違いますよね!?」


「ひいっ」


うあ、まずい。

この前も俊則独占しちゃって、凄く怒られていたの忘れていた!?


「もう、お仕置きです。このまま愛しちゃいます♡」

「ええ、舞奈さん、覚悟してくださいね♡」

「え、ええ?ちょっ、ちょっと?いやああああああああああ♡」


「あらら。じゃあ舞奈、またあとでね」


にこやかに立ち去ろうとする俊則を絵美里が怪しい笑顔で遮った。


「あら、先輩?どこに行くのかな?……逃がしません♡」

「ええっ!?振り切れない?な、何で、うわっ」


「もう、先輩もお仕置きです♡」

「う、うああああああ」



※※※※※



結局4人で朝まで。


お互いをとことん、心を交わしました。

アハハ、ハ。


いやー相変わらずルルと絵美里凄いわ。


うん。

なんだかんだ…そ、その。


ま、まあいいけどね。


コホン。


最終決戦まであと3か月。

絶対に勝とうね俊則♡


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ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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