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第38話 3つの選択肢

王様との面会を終え帰ってきた私は。

真っ先に俊則のいる客間に向かっていた。


俊則は強くなりたいって、私を守りたいって言ってくれて。

時間のある時はうちの騎士団長に稽古をつけてもらっている。


はあ♡

もう、カッコよすぎか!


それで馬車を降りた時に、その騎士団長に今日の分は終わったと教えてもらっていた。


私はノックし、ドアを開ける。

愛しい人が笑顔で迎えてくれた。


それだけで

――心が跳ねる。


「おかえり舞奈。お疲れ様」

「うん。俊則っ!」


おじいちゃんの話に不安を抱えていた私は。

彼の顔を見た瞬間たまらなくなってしまった。


抱きしめてほしい。

触れてほしい。


……キスしてほしい。


私は一目散に俊則の胸に飛び込む。


「うあっ!?ま、舞奈?…うん、おかえり」

「ん、俊則、ぎゅーってして♡」


「う、うん。ああ、可愛い、可愛いよ舞奈……良い匂い…」


私を胸に抱き、髪を優しくなでながら、すぐに顔を赤くする俊則。


もう、可愛い♡

あと……


気持ちい♡


ああ、もう、好き♡


どうして?

全然……慣れないよ?


「俊則…キスしてほしい……ん」

「ま、待って、あの…そ、その…」


「やだ!して!……いっぱいして!」


私はもう俊則しか見えてなくて……

そっと俊則の唇に指を伸ばす。


「コホン。あの、ロナリアお姉さま?」

「ひうっ!?」


えっ?嘘。

な、なんでルルが?


え…まさか……


――浮気?


涙があふれてくる。


「あの、舞奈さん、その、ごめんなさい。私もいるのですが…」


「ふあっ!?」

「あー舞奈、だからさ、待ってって。えっと……」


私は自分がみるみる真っ赤になるのを感じた。

あり得ない羞恥心があふれ出す。



「い、い、いや――――――――!!!」



※※※※※



「はあ……『恋は盲目』とはよく言ったものですね。ねえミリーさん」

「ハハハ、ハ、ええ、まあ。……確かにちょっと……とっても可愛かったですけど」


「あー、ルルちゃんも絵美里ちゃんも、そのくらいで……舞奈、大丈夫?」


私は今真っ白な灰になっています。


はい。

恥ずかしすぎて、顔を上げられません。


うう、なんで?

どうして?


二人がいるなんて知らなかったのっ!


あああ。

恥ずかしい!!


「舞奈、その、顔上げて?ねえ、あー……」

「シュラド様!」


俊則が話している途中で何故かルルが遮り、耳元でこそこそ話をし始めた。


なんか俊則、顔赤くなってる……


やだ、ヤダよ…

なに話しているの?


やだあ。

ねえ、私を見てよ……


私はもう色々おかしくなっていて…

涙が止まらなくなってきた。


そしたら……


えっ?

…んん♡


「舞奈、愛してるよ」


俊則がいきなりキスしてきて………

ああ、あ、嬉しい♡


感情が沸き上がる…


そして私を見つめるキレイな青い瞳に愛おしさが募っていく。

優しく頬に触れてくれる。

俊則の顔が…また…


「ん……んあ…んん♡……はあ」


私は完全に力が抜けてしまった。


溶かされたみたい。

俊則が優しく私をエスコートし、ソファーに座らせてくれた。


「舞奈、落ち着いた?……俺はドキドキが止まらないけど……舞奈可愛すぎ」


はうっ♡

もう、もう。


ねえ、もう―――♡


やばいよ。

あああ、かっこいい♡


……エッチなこと

……してほしい♡


「コホン。ロナリアお姉さま?落ち着きましたか」

「っ!?……う、うん」


――そうだった。


幸せで気持ちよすぎてまた……

…そっか。


ルル。

……ありがとう。


そうよ、わたし相談に来たのに……


「コホン………ありがとう、ルル。……あなたがいて良かったわ」

「どういたしまして。お役に立てて嬉しいです」


ああ、やっぱり可愛いわ。

ルル最高ね。


「舞奈さん、何かあったのですか?ちょっと変っていうか、いつもの舞奈さんじゃないみたいでしたよ?思い詰めているみたいでしたし」


「うん。絵美里もありがとう。わたしね、さっきすごく不安だったの。王様との話し合いでね」


私は落ち着くように大きく深呼吸をした。


「俊則、もし地球に戻れるなら……戻りたい?」

「えっ?……戻れるの?」


「……うん。でもいくつか条件があるの」


俊則は難しい顔をしている。


きっと俊則は……

戻りたいよね。


でも……

もう、会えないかもだけど……


「ルル」

「っ!?は、はい」


可愛い私の従姉弟……

何時も私を助けてくれる…


(…やだな…)


「…いやだ、私ルルと離れたくない。お母様やお父様、お兄様と別れるのは嫌だ」

「……ロナリアお姉さま……」


私はダメだね。

やっぱり泣いちゃう。


でも、どうしよう。


「舞奈さん、どういうことですか?その、何があったんですか?」

「そうですよ。いきなりそんな……別れるとか……悲しいこと言わないでください」


俊則がそっと私の手を握ってくれる。


「舞奈、教えて?力になるよ。頼りないかもしれないけど……君を助けたい」


そうだ。

私一人で突っ走り過ぎだ。


まだ何も伝えていないのに……


「うん。ごめんなさい。まだ何も伝えてないもんね。分からないよね」


私は顔を上げて大きく息を吸い込んだ。

そして愛おしい皆を見回す。


「あのね、1年後に魔王が復活するの。そしてそれは運命神である私の地球のおじいちゃんから教えてもらった」


「「「えっ?」」」

「倒せるのは覚醒した俊則だけなの…その、覚醒するには……」



あああ、言えないよ…

深いつながりが必要なんて……


ガチの……


うああ!?


――感情が持たない。

うう、後にしよう。



「コホン。それで倒したあとね、因果が完全に収束するの。そして3つの道が選べる」


皆が真剣に聞いてくれている。

居てくれるだけで勇気が湧いてくる気がする。


「一つ目。そのまま何も変わらずに今の状況でこの世界で生きていく」

「二つ目。この世界での記憶を消して転生したときと同じ状況で地球に戻る」

「三つ目。私たち転生者を含め記憶と状況を全てリセットする」


選択肢を提示すると俊則は怪訝な表情で私に聞いて来た。

彼の私を心配する温かい気持ちが伝わってくる……


「舞奈、もしかして……今の君と一緒に居られないってこと?だって…同じ状況って…」

「うん。絵美里に刺されたときに戻るの。……私は38歳に戻る。絵美里は…あなたが亡くなった状況の直前に。その状態のまま地球に戻される」


絵美里は青い顔をする。


私も正直嫌だ。

加奈子とか両親には悪いけど…


俊則にいない世界になんか戻りたくない。


でも、俊則は……

あの時の素直な私が待っているはずだ。


そしてお母さんとか…

努力したカッコいい俊則はきっと……


――地球で幸せになれる。


「俊則はさ、あのデートの日に戻れるの。そして、若くて素直な舞奈と一緒になれるんだよ。……こんな38歳でこじらせた“想いの重い”おばさんじゃなくてね……今の私の記憶はないけど……あなたの努力が、生かせる世界だよ」


ダメだ。

頑張って私。


――泣いたらダメだ。


そしたら絶対俊則は。


……選ばない。


彼が一番幸せになれる選択肢を…わたしたちの為に放棄する。


俊則は優しく私に告げる。


「舞奈、選択肢なんてないよ?俺はさ、目の前にいる今の舞奈が良いんだ。それにさ、確かに戻りたい気持ちもあるよ?でもそれってさ、ズルいよね。……大輔に笑われる気がする。あいつは限られた時間を精一杯生きたんだ。だから俺は…このままが良い」


「でも、だって、あなたのお母さんとか、勉強とか、せっかくあんなに頑張っていたのに……38歳の捻くれた私じゃなくて、素直で可愛い舞奈だって待っているよ?……だから、遠慮とかしないで。私たちに気を使わなくていいから……私はあなたに幸せになってほしいの」


私は多分泣いてしまっている。


でも。

悲しいし嫌だけど……


今言った事は“本心”だ。


彼が優しく私の髪を撫でてくれる。


「ん……俊則……気持ちいい……」

「舞奈はさ、凄く可愛いよ?全然捻くれてなんかいない。……想いが重い?嬉しすぎるけど?」


優しい彼の瞳が目の前にある……

ああ、もう。


本当に好き……


「……ねえ、言ってほしい。君の本当の気持ちを」


「ん♡」


優しいキス…

デートの時みたいなキス……


「……俺の幸せはね、君が傍にいて、笑ってくれることなんだ。……今の舞奈……だめだよ?俺、悲しくなる」


ああ、もうだめだ。

もう絶対に離れられない。


――この人に近くで笑っていてほしい。


「グスッ……ごめん…なさい…ヒック……いやだよ……俊則の……ひん…いない世界……なんて……帰りたくないよ……うう…うああ……あああああああ……」


彼が優しく抱きしめてくれる。

彼の心臓の鼓動が私の鼓動と重なっていく。


とくん、とくん、とくんって……

優しい心臓の鼓動に、悲しい気持ちが流されていく…


「馬鹿だな舞奈は。……離さないよ?ねえ、好きなんだ…保育園の小さかった舞奈の時から大好きだったんだよ?姿は変わっても、俺は君が大好きなんだ。ね、笑ってほしい。可愛い顔を見せて」


「うう、もう、俊則、好き、好きなの……一緒にいたいよ」

「嬉しい。俺も舞奈とずっと一緒にいたい」


もう……


うん。

一緒にいる。



ずっと………




※※※※※



「あのー、盛り上がっているところ悪いんですけど……ジェラルド様が…」

「オッホン。あーすまないなロナリア。ちょっといいかな」


お父様が赤い顔して私たちを見ている。

私はそそくさと俊則から離れる。


(…あっ、ドレス皴になっちゃう…)


私はドレスを手で整えた。

そしてすまし顔をお父様に向ける。


「えっと……はい。なんでしょうお父様?」

「「「おいおいおいおい!!!」」」


あー。

ですよね。



ごめんなさい。


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