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第23話 沸き上がる過去と覚醒の兆し

(…人間、疲れすぎると眠れなくなる、というのは本当ね)


ベッドに倒れ込んだ私。

何故か頭が冴えていく。


弱っているせいか…嫌な考えが浮かんでくる。


今回の事件……


(…私が――シナリオを壊したから……)


思わず立ち上がり、部屋をうろつき始める。


(――不味い)


どんどんいやな考えに支配されていく。


どうして、あの女は……

頭のおかしい事を……



――頭のおかしい……?



「っ!?……まさか!?……でもっ……もう、20年以上経過している…」


突然脳裏に鮮明によみがえる。


背中を深々と刺され。

血を流し倒れ伏す


――愛おしい人の姿が


「っ!?――ひぐっ!?」


私は膝から崩れ落ちた。

涙が止まらない。


ダメだ、ダメ。

心を強く……


ああ、ヤダよ……



「やだ……ああ……グスッ……」


声を上げ、まるで子供のように泣き始める。

心細さとあの時の悲しみが。


――大粒の涙とともに心を侵食していく。



「ぐすっ…俊則……ヒック…ああ……俊則……ひん…うあああ……あああああ」



あの時私が。


もっと周りに気を配っていれば……



あの時あの女に気が付いていたら……

あの時もっと早く帰っていたら……


あの時違う道を通っていたら……


あの時、もし……



あのとき……




頭の中を埋め尽くしていく、心を削られる感情。

後悔の念に押しつぶされる


……その時だった。


「っ!?――うあっ!?痛い!……ああっ!?うああ、あうっ!?」



かつて経験のない凄まじい激痛。


頭を抱え、視界が消えていく。


(…うあ……あ………)



私はそのまま。




意識を失った。



※※※※※



「おじいちゃーん、おばあちゃんがお昼ご飯できたってー」


草の匂いが立ち込める畑の土手。

私は麦わら帽子をかぶり、お気に入りのスニーカーを履いておじいちゃんめがけ走っていた。


太陽が照り付ける。

だけど体に吹き抜ける風は涼しく気持ちが良いのだ。


長野の田舎の暑さは、私のおうちと全然違う。


おじいちゃんは私の声に気づいて、手拭いで汗を拭いた。


「はいよ。舞奈はお利口だな。ほーれ、お土産じゃ」

「えっ?なになに?きゃああああああ――――――――――――?!!」


おじいちゃんの手から大きなカエルが私の顔に飛びついて来た。

私は慌てて振り払いおじいちゃんを睨み付ける。


「酷いよ!!おじいちゃん。もう、嫌い」

「はっはっはっ、何を言ってるんだ。農業にこう言うのはつきものだぞ?さあ、飯にするか」


おじいちゃんは楽しそうに笑い、軽トラックの運転席に乗り込んだ。


「あー、私も乗る!!……荷台に乗ってもいい?」

「相変わらず舞奈はおてんばだなあ。しっかり捕まるんだよ」

「はーい。おじいちゃん大好き」


軽トラックの荷台は私のお気に入りの場所だ。

おじいちゃんが育てた大きな白菜がたくさん入っているコンテナの間に立って、私は目の前にある棒みたいなのをぎゅっとつかんだ。


おじいちゃんの家のすぐ裏の畑だ。

たぶんちょっとしか乗れないけど。


体を吹き抜ける風が最高に気持ちいい。

遠くの山の深い緑と、畑の野菜の薄緑色が目に飛び込んでくる。

そして毎回私とおじいちゃんはおばあちゃんに怒られる。


ああ、楽しいな。

私は大きくなったら絶対農業をやりたい。

おじいちゃんと美味しい野菜を作るんだ。


小学1年生の私はそうなることを信じていた。


その日の夕方。

縁側で遊んでいた私はお盆過ぎの田舎の夕方の風の冷たさに身震いしていた。


「うう、夏なのに寒い」

「舞奈、おいで。じいちゃんと一緒に涼もうか」

「寒いの!!」

「はっはっ、じいちゃんの膝はあったかいぞ」


私はおじいちゃんの膝にスポッと収まる。


ホントだ。

あったかい。


「なあ、舞奈。農業ってのはな、自然の恵みとかをもらうお仕事なんじゃよ」

「うん?」

「はははっ、まあいつか分かる。そして嘘はつかないものじゃ」

「嘘つかないの?」


「ああ、農業もそうじゃがな。因果もごまかしがきかないんじゃ」

「ん?いんが?わかんない!」

「だからな、どうしようもない時はそういう約束を過去にしたという事じゃよ」


「???」


「でも間違えたままじゃかわいそうじゃろ?」

「かわいそう?……頭撫でる?」


私の言葉に、おじいちゃんは愉快そうに声をあげる。


「はっはっは、そうじゃな、運命の頭を撫でるか。流石舞奈じゃな」

「舞奈えらい?」


「ああ、偉いな。じゃから特別にじいちゃんが教えてやろうな」

「なにを?」


「おまじないじゃ。ええか?こうやって言うんじゃ………理を超える……………」



※※※※※



「……さまっ!……えさまっ!!…ロナリアお姉さま!!」


どのくらい倒れていたのだろう。

ルルが涙を流しながら必死に呼び掛けていた。


(……あれ、なんだろ……懐かしい夢を……見て……

夢で聞いた……おじいちゃんの言葉……確か……)


私はまだ夢の続きを見ているように


――呟いた。


「…理を超える…約束の力を……我は求めん……」


刹那。


――光の奔流がほとばしる。

爆発的に吹き上がる魔力と神々しい光。


心が溶けそうな心地よい光に。


私は包まれた。



※※※※※



この時私は。

――新たな力を得ていた。


切り札となる力。


『救済の亜神』の力を。


代償なのだろうか。

私は丸一日を覚ますことはなかった。


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