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第21話 激震の大粛清

今回の事件は王国を揺るがした。


いや。

揺るがすなんて生易しいものじゃなかった。


――激震だ。



まず第2王子カイザー殿下。


――廃嫡のうえ流刑。


さすがに現役の王子様を死罪にするわけにはいかないのだろう。


もともと政治的には殆ど意味がない王子だったけど。

そうはいっても。

彼を担いでいた多くの貴族がある程度の影響力を持って存在していたのは事実だ。


それが悉く今回の事件でその力を奪われた形になった。


王国内の勢力図が書き換えられてしまった。


そしてビルシュタイン侯爵家は伯爵への降爵。


第一皇子アレス殿下の婚約者の実家だが…

お咎めなしとはならなかった。


まあ令嬢との婚約自体は継続するのだけれどね。


“件の令息”は今、王国病院で治療中らしい。


奥様から隔離した形だね。

まあ今後…彼は“地獄”のような結婚生活になるのだろうけど。


ちょっと気の毒だ。



事件に関与した伯爵家、子爵家、男爵家は取り潰し。

そして多額の賠償金と強制労働が課せられた。

これからうちの領内の鉱山で頑張って働くそうだ。


まあたぶん。

帰る前に体を壊すのだろうけれど。


誘拐事件に直接関与はしていなかったけど、パーティー会場での行動を咎められていた3馬鹿トリオは直接の罰はなし。

だけどドレスト侯爵に睨まれ続けるご褒美が付きました。


ご愁傷様です。


そして男爵家のミリーは。

証拠不十分で無罪らしい。


意味が分からないけど直接的な証拠はすべてカイザー殿下の名前だったそうだ。


まあ絶対決着はつけるけどね。

あの女は野放しにはできない。


野盗の皆さんは全員仲良く打首です。

女を襲うしか能のない悪党の末路としては当然の結果だ。


逆に我がウッドストック伯爵家はレイナルドお兄様の功績が認められ、侯爵家へと陞爵されることになった。


まあ実際に救出したのはお兄様だもんね。

そして驚くことに隣のフィナリアル領が新たに併合された。


フィナリアル伯爵とその息子が、まさかのダブルで今回捕縛されていた事実。


領民には気の毒だけど。

変態に治められるよりはいいのかもしれない。


その結果。

何と私の家の治める領地は面積で5倍以上になってしまった。

まあフィナリアル領は、荒野と山林がほとんどを占めている。

人口はむしろウッドストック領の方が多い。


暫くはお兄様がフィナリアル領を治める予定だ。

いきなり領主みたいな立場になったお兄様は、なぜかにやりとしていたけれど。


あの方は驚くほど優秀だわ。


さらに吃驚する程の多額の報奨金も贈られることになった。

何と白金貨500枚。

日本円で50億円も貰う事になってしまっていた。


あはは、もうね。

意味わからないよね。


父上は腰抜かしていたし。


まあ、私には関係ないけど。


……ないよね?


そのほかにも爵位持ちが減った分、今までの功績により新たな爵位持ちが誕生するなど、かなりの混乱が起こっていた。


ははっ、凄いわねエリス嬢。


あの子の貞操をめぐって、この国の形が大きく変わってしまうとは。

まさに『傾国の美女』だね。


……多分、というか絶対あの子



……百合だけど。



※※※※※



今回の激震により『第2部』は完全にシナリオが崩壊した。

何しろ攻略対象者15名のうち、すでに7名が消えた形だ。


まあ元凶はほぼミリー嬢だ。

きっと無理やりにでもシナリオを進めていくのだろう。


あの子の行動をマークする必要がある。



※※※※※



私は自室で、これから起こるであろうシナリオを思い起こしていた。


「うーん、残っているのは3馬鹿トリオのアントニオ・ロローニ・エスベリオと、第2騎士団の小隊長ルドルク、それとブルーム子爵、聖教会のギルビル司祭………あとは……あっ、法務局長次男アノーンと、ギルドサブマスターのカルディナ、この8人ね」


情報をまとめたノート。

それを見やりため息をつく私。


「……でもたぶん3馬鹿はもう無理でしょ。ドレスト侯爵の目を盗むのは不可能だろうし」


「5人か。……しばらく放っておいてもいいかな。係わりないし」


私は天井を見上げ考える。


一番質の悪い3馬鹿が封じられれば直接被害にあう女性はいないはずだ。

アイツら性欲の塊だもんね。


まあ、スチルはきれいだったけど……


他の5人はイベントが発生するのは最速でも1年以上先の話だ。




私が悩んでいると、ドアをノックしルルが部屋に入ってきた。


「ロナリアお姉さま、お茶にしませんか?……お疲れのようですし」

「ありがとうルル。嬉しいわ。お願いできるかしら」


「はい。すぐに紅茶用意いたしますね」


てきぱきと用意する可愛いルルを目で愛でながら、私は少し気を抜いていた。


絶対にマークしなくてはならないと思っていたミリー嬢の行動力を舐めていた。

そして勘違いをしていたんだ。


そう。

この世界は確かにゲームの世界が元になっている。

そして私はやりつくし、多くの事を知っている。


――慢心していたんだ。


だけどあの頭のおかしい女。

ミリーは。


このゲームのことなど…全く知らなかった。


だからもともとシナリオなど全く関係なく、ただ自身の信じている目的の為だけに行動していた。



※※※※※



(あーあ、カイザー様はもうだめね。…まあ別にどうでも良いけれど)


一人自室のベッドの上で、ミリーは思いにふける。


(…でも影響力のある殿方でないと、この力をばら撒くのに少し面倒なのよね。

私はしがない男爵家の娘という立場しかないから……)


(それに……

なんだか誰かが私の邪魔をしているみたいね。

付与したものが解呪されている)


「ふふふっ、アハハハハハ。――まあ関係ないけどね」


立ち上がり、怖気を誘うような笑みを浮かべる。


「さあ、増やそう」


そして立ち昇る。

濃厚で、身の毛もよだつ性質の魔力が。


(本田先輩、待っていてね。私があなたを見つけるから)



ドアをあけ放ち、自身に満ちた表情で玄関へと向かう。



(そして――永遠に一緒にいようね)



※※※※※



ある程度ミリー嬢は制限していたのだろう。

今までは。


だけど王子という後ろ盾を失った今。


私の『鑑定』では解呪できない凶悪な、まさに『呪いと同等』な付与を無差別にばら撒きはじめた。


そして王都では、犯罪の嵐が吹き荒れたのだ。


もはや王都の治安は崩壊。



外を歩くことができない状況に陥っていた。


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