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第19話 救出したエリス嬢と侯爵様

私の“作戦”が見事にはまった。


既に卒業パーティーは終わりをつげ。

今、伯爵家の地下牢には憲兵に偽装した野盗三名が、腕と足をぐるぐる巻きにして転がされていた。


そして横では。

あり得ないくらい可愛い表情を浮かべたエリス嬢が、なぜか私に懐きまくっている。


「ロナリア様、素晴らしいですわ。ああ、もっと早くあなた様に出会えていたら…殿下などどうでも良かったですのに」


そしてなぜか色気全開で私に抱き着いてくる。

くっ、さすが侯爵家令嬢。


凄くいい匂いがする。


しかもこの子……Fだな。


「ううっ、お、お前ら!?こ、こんな事して、――どうなるか分かっているんだろうな!?」


一人の野盗が睨みながら吐き捨てるように喚いた。

私は人を殺すような視線を投げかけ睨み付ける。


「は?野盗が何をほざくのかしら?……まずはアレをちょん切りましょうか。どうせ犯罪しか使い道はないのだから。……ルル」


「はい、ロナリアお姉さま」


ルルが私に、枝を剪定する大きな鋏を手渡した。


私はうっとりと顔を赤く染めながら、刃に舌を這わす。


(……言っておくが演技だからな!)


「ふふふっ、あなたのあそこの血は何色かしら。…ねえ、見せてくださる?」


そして。

おもむろに太ももの付け根に、刃先を押し当てる。


(…っ、鋏越しでも気持ち悪いわね)


「ひいっ、や、やめ……」


顔色をなくす野盗A


「あら、あなたたち『やめて』は『お願いします』なのよね?……クズは死ねばいいわ」


そして強めに突き刺した。



ええ、もちろん“アレ”ではないわ。

――太ももよ。


「いぎゃあああ!??やめっ、お。お願いします、何でも話しますうう!?」


流れ出る血に、野盗Aは命乞いを始める。


何故か横でエリス嬢がうっとりと私を見ているが……


――なぜにハアハアしている?


「ふん。根性ないわね……次はお前ね」


私はわざと間違えたふりをする。

今刺した野盗Aの太ももに、再度鋏を突き刺しながら野盗Bを睨み付けた。


「ひいっうっ!!??い、いぎゃあああああああ―――!??」


一度安心してからの激痛。

転げまわって痛がる。


(さっきより痛いでしょ?)


「あら、良い声で鳴くのね……興奮しちゃう♡」


(……あああ!?わたしの“キャラ”が……)


ダメよ。

がんばるのよ、ロナリア!


「はうっ♡ロナリア様素敵♡はあはあはあ♡」


ぷるぷる震えながら昇天する勢いのエリス嬢。




――おい、誰かこの変態黙らせろ。



※※※※※



分かり切っていた事ではあるけれど。

黒幕は第2王子のカイザー殿下だった。


そして私の読み通り。


――頭が悪くていらっしゃる。


何と指示書を、野盗Cが馬鹿みたいに大切に隠し持っていたのだ。

しかもきっちり王家の印まで押してある愚かすぎる雑な仕事。


ご丁寧に誘拐の手順や、監禁する場所。

心を折るための“行為”に参加する貴族名までつらつらと書いてあった。


「はあ、何なのあの馬鹿王子。逆に心配になるわね。……罠じゃないかしら」


はっ、もしかしてそう思わせるためのフェイク?


(………いや、ないな)


そんな事が出来るならこんなアホな事をするはずがない。


取り敢えず証拠は手に入れた。

さあ、お仕置きの時間ね!



※※※※※



「はああ、さすが侯爵家ね。調度品が家より数段上だわ」


今私は。

ドレスト侯爵家の応接室に来ていた。


もちろん来る前にお父様達と情報の共有は抜かりない。


今頃阿呆どもはお縄についている事だろう。


だけど。

どうしてこうなっているの!?


何故か顔を赤らめ。

ハアハアし、べったりと腕にしがみついているエリス嬢。


彼女とともに侯爵家当主ルイルット様と面談するため高級な美味しい紅茶を楽しみながら待っているのだけれど。


後ろに立つルルの目が非常に怖い……


う、浮気とかじゃないんだからねっ!

ホントだよっ!


どうして流す必要のない冷や汗を垂らしながら拷問のような時間を過ごしているのか。

私はじっくり膝を付け合わせて問い詰めたいのだけれど?


そんなことを悶々と考えているタイミングでドアがノックされ、侯爵家当主のルイルット様が入室してきた。


わあ、さすがは侯爵様だ。

オーラがある。


当然だが事前に説明は済んでいる。


伯爵家程度の小娘が会えるわけがない。

お父様にご足労願ったのだ。

もちろん指示書の複写したものも渡してある。


……ないとは思うけど。

万が一侯爵様までグルだったら目も当てられないからね。


本物を手放すなど愚かなことはしない。

私は万全を尽くす女なのよ。


私はしがみついているエリス嬢を振り払い、立ち上がりスカートのすそを摘みカーテシーを披露する。


「ウッドストック伯爵家が長女、ロナリアにございます。本日はお忙しいところお目どおりかないます事、光栄の極みにございます」


「よい、楽にしたまえ。掛けなさい。……エリス、すまなかったな。怖い思いをさせた」


「ありがとうございます。それでは失礼して座らせていただきますわ」


私が座るタイミングでエリス嬢は、すでにソファーに座った父であるルイルットに飛びつくように抱き着いた。

そして甘えるような声で話し始める。


「お父様、大丈夫ですわ。ロナリア様が助けてくださいましたの。はあ、とても麗しくかっこいいのですわ♡」


あー。

なんかこの子のイメージダダ下がりなんですけど?


――出来るエリス嬢はどこに行った!?


「コホン。あーロナリア嬢、君の父上から大まかには聞かせてもらった。娘を助けてくれたこと、心よりお礼申し上げる。この通りだ」


「っ!?」


驚いた。

天下の侯爵様が私みたいな小娘に頭を下げるなんて。


……はっ、いけない。


「あ、頭をお上げください。……謝辞は謹んでお受け取りいたします」


しまった、反応が遅れた……


私は思わず表情を引きつらせ、気合を入れ一瞬で元に戻す。

背筋を伸ばし、侯爵の目を真直ぐに見つめる。


「ハッハッハ、よい、気にするな。うむ、たいしたものだ。エリスと同い歳とは思えないな」


侯爵は嬉しそうに目を細め言葉をつづけた。


「まるで“経験豊富な熟女”と相対しているようだ」


くっ、負けるなロナリア。

余裕よ。


――気を抜いたらダメだ。


「まあ、お戯れを。…まだまだ小娘ですわ。あまりいじめないでくださいませ」

「ハッハッハ、ジェラルド卿は良い娘を持ったな。…ふう、まあ、楽にしなさい。ちと戯れが過ぎたな。すまない」


侯爵の圧が消える。


どうやら及第点ではあったようだ。

私も雰囲気を軟化させた。


「いえ、小娘の矜持の様なものですわ。――失礼いたしました」


これでスタートライン。

ああ、面倒くさいわね。



※※※※※



暫く紅茶を楽しみながら。

他愛もない世間話でお茶を濁す。


侯爵様はふっと息を吐き出し、少しだけ圧を乗せ私の目をまっすぐ見つめてきた。


「ロナリア嬢は――どこまで掴んでいるのだ?」


きた!

これが本命ね。


「はい。『百合の会経由』と、言えばよろしいでしょうか」


「ふむ。あくまでその立場を固持するか。……分かった。悪いようにはしないと約束しよう」



「ありがたき幸せにございます」


ふうー。

緊張するわね。


まあこれで


「女性の中でのちょっとした噂に乙女の感が絡んだ」


になるのよね。


私の力を知られるのはリスクが高すぎるとお母様は仰っていたわ。


……ありがとうお母様。


そもそも地球生まれの私に貴族の腹の探り合いなんて出来るわけない。

これ全部お母様の指導の賜物なのよね。


さあ、終わりが近づいて来たようね。


侯爵様の圧が消えた。


「どうやらエリスが気に入ったようだ。これからも仲良くしてもらえると嬉しい」

「もちろんですわ。わたくしで良ければ喜んで」


「時にロナリア嬢……“婚約者”はもう決まっているのかね」

「えっ、あの、その……」


――不味い。

もし侯爵様に紹介されたら…断ることができない。


なぜか私の頭の中にやさしく微笑む俊則の顔が浮かんだ。

私の頬に朱がともる。


「もうー、お父さま?こんな席でするお話ではないですわ。まあ、そうなればわたくしも嬉しいですけれども」

「ハッハッハッ、そうであるな。うむ、気にしないでくれると嬉しい。……どうやら想い人もいるようだ」


私の顔がますます赤く染まっていく。


くっ、頭が混乱して何もいう事が浮かばない。

その様子をみて侯爵様から優しい雰囲気が滲みだしてきた。


「ふむ。それでは私は失礼するよ。ゆっくりしていきなさい。あとで送らせよう」


侯爵様は席を立ち、部屋を退室していった。


危なかった。

そして怖かった。


侯爵様との面談とか……

二度とごめんだわね。



はあ……疲れた。


「面白かった」

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