表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/25

第14話 男爵令嬢ミリー

王都近郊の街。


郊外の大きな屋敷の自室で。

ミリーは5日後の卒業パーティーに着ていくドレスを前に、顔をほころばせていた。


「んふふ♡これは殿下からの贈り物でえー、こっちはアントニオ様。それからこれは、まあ、ロローニ様ね♡――可愛い」


年相応に目を輝かせ、うっとりとした表情を浮かべる。


「えっと、それから…エスベリオ様からのもあるのね。…はあ、なんて素敵♡ああ、早く5日後にならないかしら」


まさに幸せの瞬間。

しかしそれは。


唐突に破られる。


オボルナ男爵家当主のジドーラが、ずかずかとミリー部屋を訪れた。


「おいミリー、どれかよこせ。どうせ着るのは一つなんだろ?売り払って娼館へ行く銭にするからよ」


下品にゲハゲハ笑い、いやらしい目をミリーに向ける男爵。


異様な魔力。

それを纏うジドーラは、何故か瞳を濁らせる。


「…お父様。…ノック位してくださらないかしら。淑女に対して失礼ですわよ」


「ふん、お前なぞただの“金づる”だ。いつも言ってるだろうが。――それとも久しぶりに“気持ちよく”してやろうか?んん?」


彼らは。

――実の親子ではない。


男爵令嬢ミリー。

設定上全く情報は出てこないが。


――実は拾われた子。


そして彼女は……転生者。


一番与えてはいけないスキルを。

この“頭のおかしい女性”は得ていた。


ジドーラはミリーに近づくと、いきなり体に手を伸ばす。


「いやっ、お父様?!やめてっ」

「ふん、無駄に育ちやがって。ぐふふっ、確かにいい具合だなあ」


抵抗するミリー。

それをあざ笑うかのように、強引にベッドへと押し倒し、顔を近づける。


「へへっ、気が変わった。どうせおまえはすぐに出ていくんだ。とっくに聖魔法の資格を失ったお前だ。…今更変わらねえだろうがっ!」


「やっ、いやあ!?やめてよっ、――あうっ!?」


ぱし――ん


響き渡る音。

赤くなるミリーの頬。


「このっ、おとなしくしやがれ。へへっ、いい具合だなあ、くくっ、若い女の匂い――たまらん」


「だめっ、いやあ、やめてっ、ああっ!?」



ありえない暴挙。

養女とはいえ、娘に向けるその行為。



まさに散らされる。


――その時!!


バンッ!!


「ミリー!?…こ、この愚か者があああ!!!」

「ぐああああああ――――?!!」


ドアを乱暴に開き、部屋に飛び込むロローニ。

覆いかぶさっているジドーラを、力任せに引きはがす。


怒りを込めた拳がジドーラを吹き飛ばした。



※※※※※



まさに乱暴の一部始終。

未遂とはいえ、その恐怖は計り知れない。


自身を抱きしめ、目に涙を浮かべるミリー。

そっとロローニは、優しく彼女を抱きしめた。


「ロローニ様、ああ、恐かった、うああ、ああああああっっ」

「くっ、なんてひどい……ああ、大丈夫だよ。…可愛いミリー」


香る女の匂い。

触れる感触。


この時すでにロローニは。


ミリーにとって都合の良い“道具”に成り下がっていた。



そもそも警ら中のロローニが、ここにいる事実。

すでに破綻している内容と異常な状況。


しかし。


あるスキルによってもたらされた事実。

それは。


――誰にも想像がつかない。



一瞬ニヤリと顔を歪めるミリー。



闇は静かに。

確実に進行していた。



※※※※※



今回の暴行未遂事件。

意外な場所に影響を及ぼすこととなる。


連行されたジドーラのあり得ない証言。

そしてなぜか牢の中で自害。


王宮の騎士詰め所は混乱に包まれた。



ありえない証言。


――それは。


『ドレスト侯爵家』のシナリオ。


つまりジドーラは、侯爵の策略により娘を襲った。

そう吐き捨てていた。


事実は実に単純。

執念深い、ミリーの復讐と策略。


だがそれは誰の想像にも上らない。



なぜなら――



※※※※※



不可解な事件。

ここ2年ほど集中して起こるそれ。


大体その中心にはいつも特定の人物、ミリーがいた。


当初疑いの目は、当然のように男爵家のミリーへと向いた。

しかしあまりにも直接的なダメージを本人が受けているため、状況的に自作自演にもかかわらず。


誰もそこに触れることができない。


仮に自作自演だとしても。

普通は自らの命や安全を確保するのが普通だ。


巧妙に隠されたとしても、状況証拠などで解明される。


ミリーが恐ろしいのは。

目的のため“自分の安全を考慮しない”点にあった。


自分のために行っているはずなのに。

最悪自分が死んでもいいと思って行動する。


まさに異常な精神。


彼女はもうすでに。


――狂っていた。



恐ろしいまでに自己中心的で考えが足りない。

しかしすべてを命がけで行う。


その上で実は――“どうでも良い”と考えている。


まともな神経と理知的な思考では、彼女の狂気を掴むことができなかった。



※※※※※



彼女は地球である男性に恋をする。


そしてその相手は。

――自分以外を選んだ。



そしてその行動は常軌を逸する。


殺害と自殺。

明らかに倫理を超える暴虐。


彼女は恐ろしいまでに純粋に一つの事を信じ続けていた。


『運命』


だからどんなことが起ころうと。

誰が死のうと、世界が滅ぼうと。


結局最後には結ばれる。

なんの疑いもなく信じていた。


ゆえに。


――彼女に恐いものはない。


そして今から彼女が行うこと。

運命の相手を見つけるための最善手。


ありとあらゆる男性を惑わすための準備に過ぎなかった。


彼女の有するスキルは幻術に特化した精神魔法。

そして称号【惑わすもの】を所有。



女性の地球での名前。


高木絵美里




舞奈と俊則を引き裂いた元凶だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ