3.まず始めるべきは現状把握
さてさて。
大恩ある親に報いるという、この世の中で最もピュアな動機と言っても過言でない動機を抱え、叔父の遺した古道具屋に降り立った19歳、ただしあと1ヶ月で20歳。
さっそく行き詰まった。
文字どおり、物理的に行き詰まってしまったのである。
どうしたものか。
店頭はまだ良い。
ガラクタがびっしりと空間を無秩序に占拠している様子ではあるが、さすがに一応身動きは取れる。
足の踏み場がある。
しかし、会計カウンター(一度でも使われたことがあるのか?)の奥のドアをくぐって廊下に出ると、状況は一変する。
廊下に物が詰まっているのだ。
どうやらこいつらの来し方は、廊下突き当りのキッチンのようである。
おそらく叔父は料理をしない人だったのだろう。
しかし、置き場のないものをキッチンに積み上げるのはどうかと思う。
1、2週間前にこのあたりでそこそこ大きな地震があった。
おそらくそのときに状況が最悪と化したに違いない。
おおかた、物置代わりだったキッチンに、叔父がガラクタを芸術的に収納していたせいで、地震でたまたま開いたドアからガラクタが漏れ出したのだろう。
廊下に詰まったガラクタのせいで、廊下に並ぶドアのうち、一番手前にあったトイレのドアしか開かない。
もはやトイレが使えることに感謝すべきかもしれない。
トイレが生きていたおかげでここに籠っての長時間作業が可能になったことは否定できないもんな。
しかも、ここからちらりと見える一番奥のドアには、明らかに手書きの謎の文様がかいてあるのが分かる。
おい、叔父よ。
ただでさえ立地の悪いこの物件、そんなものを書いたら全く買い手がつかなくなるだろうことは想像できなかったのか。
もしかすると必要に迫られたのかもしれないが、何せ生前会ったこともない叔父なのだ。
どういう思考でその行為に至ったのかが全く分からない。
俺は叔父がどんな人だったのかを全く知らないのだ。
まったく、いいかげんにしてくれ。
何度現実逃避をしようと、目前に突き付けられた残酷な現実は変わらない。
これはガラクタが置いてあるのではない。
詰まっているのだ。
しかも、なかなかに芸術的な詰まり方をしており、引っ張る場所を少しでも違えると、こちらに向かって雪崩落ちてきそうな気配がする。
やめてくれ。
なろう小説じゃあるまいし、叔父の残したガラクタに埋もれて死亡、なんて冗談じゃない。
そんなクソみたいな設定の小説、誰も読まねえよ。
しっかしどうしよう。
試しに端っこのほうで何かに引っかかって足だけ突き出しているいる、汚い三脚を引っ張ってみる。
廊下の奥のほうで、〈ガラガラガラ…〉。
俺は早くも絶望した。
しかもこの三脚、なんか触ると手がべとべとする。
最悪だ。
春休みシーズンということで、来週からは 月・木・土 の週3投稿とします。
どうぞご贔屓に。
明日は、「夫婦喧嘩は犬も食わない。では、そのうち片方はわんこである場合、どうすればいい?」にて、
後日譚「あだ名の由来」を更新します。
良ければ是非。




