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「今日、会社で」
「うん?」
「俺、童貞だったのバレました」
遥花が一瞬止まる。
「……え?」
「初めての彼女って言ったら、そうなりました」
数秒の沈黙。
それから、
「ふっ、なにそれ」
笑いこぼれる。
「いや、別に隠してないですけど」
「流れです」
ソファに座る。
そのまま、少しだけ距離詰める。
「引きました?」
「いや全然」
むしろ楽しそう。
「なんか、湊っぽい」
「なんですかそれ」
「真っ直ぐすぎる」
笑いながら言う。
「でも」
少しだけこっち見る。
「嬉しいよ」
その一言。
胸の奥、静かに落ちる。
ぼそっと返す。
「初めてなんで」
遥花がまた笑う。
「知ってる」
その距離。
その空気。
当たり前みたいに隣にいる。
――これでいい。
最初から、ずっと。




