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社員食堂。

トレーを持って席につくと、隣に先輩が座る。


「なあ。」


箸を持ったまま、にやっと笑う。


「お前、彼女年上なんだって?」


一瞬だけ手が止まる。


「はい。」


さらっと答える。

前なら、少しだけ身構えてた。


今日は違う。


「結婚とか色々だるくね?」


笑いながら言う。

悪意はない。

ただの軽口。


昔の俺なら、

ここで内心ざわついてた。


“だるい”

“今なんだよね”

“若いね”


全部刺さってた。


でも。


今日は違う。


「だるくはないですね。」


箸を止めずに答える。


先輩が目を上げる。


「むしろ。」


少しだけ笑う。


「俺のほうが焦ってました。」


先輩が吹き出す。


「は?なんで。」


「間に合わないかもって思ってたんで。」


自分で言って、少し可笑しい。

でも本音だ。


「お前なんてまだまだ若いんだから選び放題だろ。」


前なら、

ここで“若い”に反応してた。


今日は違う。


「確かに若いですけど。」


視線を上げる。


迷いなく。


「彼女しか興味ないです。」


先輩が一瞬止まる。


「へえ。」


「彼女も待ってくれてるんで。」


言葉が自然に出る。


「揺れてる場合じゃないんですよね。」


それは前の俺には言えなかった言葉。


衝動じゃない。

意地でもない。

ただの事実。


先輩が少しだけ真顔になる。


「……意外と重いな、お前。」


湊は小さく笑う。


「重いかもしれないです。」


でも。


「ちゃんと並びたいんです。」


その言葉に、自分でも少し驚く。


もう“間に合いますか”じゃない。

並ぶって決めてる。


「ま、頑張れよ。

若いってのは武器だからな。」


焦るためじゃない。


積むための時間。


その違いに、やっと気づいた。


前までは、

不安と嫉妬でざわついてた。


今日は違う。


選ばれてる。


待ってくれてる。


だから、揺れない。




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