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静かな部屋。
さっきまであんなに荒れていたのに、
今は呼吸がゆっくり重なっているだけ。
湊が、少しだけ距離を取る。
目を合わせない。
「……俺、さっき最低でしたよね。」
小さく。
本当に小さく。
あんなに強く抱き寄せて、
あんなに熱をぶつけてきた人と同じとは思えない。
不安そうで、
後悔してて、
自分を責めてる顔。
私はゆっくり首を振る。
「どこが?」
静かに聞くと、湊は苦笑する。
「感情ぶつけて。乱暴で。」
言葉を探す。
「余裕なさすぎでした。」
視線を落としたまま。
さっきまで“取られるのが嫌だ”って
あんな顔してたのに。
今は、自分が嫌われたんじゃないかって顔してる。
私は体を少し寄せる。
指先で、湊の頬に触れる。
「ねえ。」
目を合わせて、私は小さく笑う。
「嬉しかったよ。」
ずっと理性で包んで、
大人ぶって、
余裕ある顔して。
「若いとか、間に合うとか、どうでもいいの。」
私は湊の胸に手を置く。
鼓動がまだ速い。
「こんなに必死に
私の隣にいたいって思ってくれてる人がいるんだよ。」
湊の喉が動く。
「俺、取り乱してましたよ。」
「うん。」
「でもさ。」
指を絡める。
「取り乱すくらい本気なんでしょ。」
さっきのぐちゃぐちゃも、
嫉妬も、
卑屈も。
全部、本音だった。
「……嫌われてないですか。」
私は額を合わせる。
「好きだよ。」
迷わず言う。
「さっきの湊も。」
指先で、湊の耳に触れる。
「独占してくれるの、嫌いじゃない。」
ほんの少しだけ意地悪に言うと、
湊の耳が赤くなる。
「調子乗りますよ。」
「いいよ。」
小さく答える。
今度は、湊のほうからゆっくりキスを落とす。
さっきみたいな衝動じゃない。
「次、不安になったら、今日みたいにちゃんと言って。」
「……八つ当たりでも?」
「うん。」
少し笑う。
「私、受け止めるから。」
その言葉で、
やっと湊の肩の力が抜ける。
呼吸がゆっくり重なっていく。
今度は、静かに。
でも焦りはない。
ただ、隣にいる。
それだけで十分だった。




