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ああ、もう俺必要ないんだ。
何も言わない遥花の目が、そう言ってる気がした。
違うってわかってる。
でも今は、まともに考えられない。
それなら、もう何しても良いか。
遥花の腕を引き寄せる。
逃がさない。
そのまま唇を奪う。
深い。
荒い。
奪うみたいなキス。
息が乱れる。
「若いって言われるなら、若いままでいい。」
喉が焼けるみたいに熱い。
理性が軋む音が、自分でもわかる。
そのまま押し込むように、寝室へ向かう。
マットレスが沈む。
息がぶつかる。
再び唇を塞ぐ。
触れ方も、普段より乱暴になる。
さっきまで溜め込んでた
嫉妬も、不安も、全部混ざってる。
「……俺、余裕ないです。」
息が荒い。
それでも止めない。
首筋に触れる指先も、普段より強い。
逃げ道を作れない距離。
「置いていかれるの、嫌なんです。」
噛みつくみたいなキス。
「若いとか言われるたびに、腹立つんですよ。」
自分に。
世界に。
「勝手に比べられて、勝手に足りないって決められて。」
呼吸が乱れる。
視界が熱い。
「でも一番腹立つの、俺なんです。」
額を押しつける。
「遥花さんの隣にいるのに、自信ない俺に。」
また唇を重ねる。
「今日、直哉と笑ってるとこ想像して。」
声が掠れる。
荒い息。
胸が上下する。
完全にむき出し。
「俺、めちゃくちゃ独占したいです。」
止まらない。
止めたくない。
ずっと我慢してた理性が崩れる。
そのとき。
手の甲に、温かいものが落ちる。
遥花が泣いている。
息が止まる。
一気に血の気が引く。
「……ごめん。」
理性が戻る。
自分が何しようとしてたか理解する。
「怖かった、ですよね。」
指先が震える。
「俺、最低ですね。」
離れようとする。
その瞬間。
遥花の手が、服を掴む。
「ちがう。」
涙で濡れた声。
「怖くて泣いたんじゃない。」
「初めて、本当の湊が見えた気がして。」
「ずっと強がってたでしょ。」
胸が締めつけられる。
「今日、やっと本音ぶつけてくれた。」
涙が頬を伝う。
「うれしい。」
ぐらりと理性が揺れる。
「もっと、して。」
その一言で、呼吸が止まる。
俺がさっきまで壊しかけてたのに。
泣いてたのに。
なのに。
選ぶのは、俺なんだ。
喉が熱い。
「……後悔、しません?」
最後の理性。
確認というより、縋り。
遥花は迷わない。
小さく、でもはっきり頷く。
その目が、まっすぐで。
逃げも、試しも、ない。
胸の奥で何かが音を立てて切れる。
もう止まれない。
今度は奪うキスじゃない。
確かめるキス。
絶対に、離さない。




