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日曜の夕方。
スーパーの袋を両手に下げて、
湊が私より一歩前を歩く。
少し汗ばんでいて、
その背中がなんだか頼もしい。
「重くないですか。」
「平気だよ、これくらい。」
言い合いながら笑っていると、
「遥花?」
振り返る。
結婚式で会った同級生。
ヒールの音がカツカツ響く。
「偶然だねー!」
そして視線が湊に向く。
「あ、こないだ言ってた彼氏?」
にこっと笑う。
「若いね〜!」
悪気ゼロ。
明るい声。
「え、何歳?」
「二十三です。」
湊が穏やかに答える。
「へぇ〜!若い!いいな〜!」
笑いながら、さらに。
「可愛い系?癒し系って感じだね。」
可愛い。
その言葉が空気に残る。
私は気にしない。
本当に悪気ない。
でも、湊は少しだけ笑顔を保ったまま黙る。
同級生は続ける。
「まぁ若いっていいよね〜。これからだもんね。」
“これから”。
その言葉は湊に向いていない。
“これから”=まだ途中。
少し世間話をして別れる。
歩き出す。
夕方の風が少しぬるい。
しばらく沈黙。
「……俺、そんな若いですかね」
湊がぽつり。
冗談めいた声。
「だって若いじゃん。」
ただの事実を言ったつもりだった。
その瞬間。
湊の横顔が、ほんの少しだけ曇った気がした。
「……そうですね。」
それ以上は言わない。
手は、ちゃんと繋いでいる。
でも。
握る力が、ほんの少し強い。




