3
三人でいることが増えた。
増えたのは時間だけで、
関係はまだ変わっていない。
はずだった。
「今週、空いてる日あります?」
唐突な質問に私は瞬きをする。
「え?」
「映画、観たいのあるんです。」
さらっと。
でも目は外さない。
「3人で?」
悠が笑う。
「俺はバイト。」
私は戸惑う。
「……なんで私?」
湊は少しだけ首を傾げる。
「行きたい人誘ってるだけです。」
簡単な顔で言う。
でも、簡単じゃない。
私は腕を組む。
「学生でしょ。」
「はい。」
「友達誘ったら?」
「遥花さんと行きたいです。」
即答。
逃げ道を潰してくる。
悠は何も言わない。
ただ、見ている。
私は息をつく。
「なんでそんなに来るの。」
小さく聞く。
湊は少しだけ考える。
そして、正面から言う。
「外にいたくないからです。」
胸が鳴る。
また、その言葉。
外。
横。
境界線。
「急いでる?」
私が聞くと、湊は首を振る。
「急いでないです。でも、止まる気もない。」
その静かな圧が、ずるい。
「押すね。」
「押してます。」
潔さについ笑ってしまい、湊も笑う。
「嫌なら、やめます。」
そこで初めて、逃げ道を置く。
嫌なんて…
言えない自分に、気づく。
悠が立ち上がる。
「俺、洗い物する。」
また席を外す。
わざとだ。
分かっている。
湊は立ち上がらない。
距離は縮めない。
でも視線は逃がさない。
「遥花さん。」
呼ばれる。
柔らかく。
でも逃げられない。
「俺、ちゃんと好きになるタイプなんで。」
告白じゃない。宣言。
私は何も言えない。
気になっている。
でも踏み込めない。
その揺れを、湊は知っている。
それでも止まらない。
境界線はまだある。
でも、もう白線じゃない。
足跡が、何本も重なっている。




