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最近、少しだけ違う。


声の高さ。

笑うタイミング。

返事の間。


湊は変わらないように振る舞っている。


でも。


長く見てきたわけじゃないけど

なんとなく


静かすぎる。


電話越しの声が、ほんの少し平坦。


「普通です。」


最近それが増えた。


普通、の中に何かを隠してる。


会っても優しい。

触れ方も変わらない。


でも、抱きしめる力が少し強い。

離れたくないみたいに。





ソファに並ぶ。

テレビはついているけど、誰も見ていない。


「どうしたの?」


できるだけ軽く聞く。


「何もないです。」


「ほんと?」


「ほんとです。」


目が合わない。


言ってくれるまで待とうと思った。

自分から話せる人になってほしい。


守る側でいたい彼の意地も分かる。


でも。


もう待てない。


「ねえ、湊。」


少しだけ真面目な声。

湊がやっとこちらを見る。


「私ね、告白の時に。」


一瞬、驚いた顔をする。


「大人ぶってるのも、強がってるのも、全部含めて好きって言ってくれて、すごく嬉しかったの。」


あの夜のことを思い出す。


「本当は大人なんかじゃないし、強くもない。」


湊の目が揺れる。


「全部バレてるんだ、って思った。」


「バレてる上で好きになってくれたんだって。」


静かに言う。


責めない。

追い詰めない。


ただ、置く。


「確かに私は、湊の時間には戻れない。」


学生の不安。

選ばれる側の焦り。


それは、もう過去の自分。


「でもね。」


一歩、距離を詰める。


「歩幅は変えられる。」


「立ち止まってもいい。」


声が少し震える。


でも止めない。


「私は湊を待ってる。」


「私も、湊の横に立ちたいよ。」


守られるだけじゃなく。

並ぶだけじゃなく。

同じ高さで。


湊の喉が小さく動く。

視線が揺れる。


強がりが、少し崩れる。


沈黙。


それから。


小さく笑う。


「……俺、かっこ悪いですね。」


声が、かすれる。


初めてきいた弱い音。


「うん。」


でも。


「でも。」


そっと抱きしめる。


「かっこ悪いとこも、ちゃんと好きになりたい。」


「全部含めて湊でしょ。」


湊の手が、ゆっくりと背中に回る。


強くない。縋るみたいな力。

肩が少し震える。


「……削られてるの、バレてました?」


「うん。」


「隠せてると思ってました。」


「全然。」


少し笑う。

でも目は真剣。


「一人で削られないで。」


静かに言う。


「一緒に削られよ。」


湊が息を詰まらせる。

抱きしめる力が、少し強くなる。


「……ずるいです。」


「何が?」


「そんな言い方。」


顔を胸元に埋める。

初めて、守られる側の体勢。


「俺、情けない。」


「知ってる。」


「それでも、横にいる。」


沈黙。

その沈黙は、重くない。


静かに、深い。


湊が小さく息を吐く。


「……ありがとうございます。」


「うん。」


額が触れる。


キスはしない。


今じゃない。


ただ、近い。


同じ高さで。


歩幅を揃える。


削られても。


揺れても。


並ぶって、そういうこと。




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