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『待たせるつもりないですけどね。』
送ってから、数秒スマホを見つめる。
我ながら、言い方が強い。
でも、引っ込めない。
強がりじゃない。本気だ。
ベッドに倒れる。
今日も面接だった。
手応えは、正直微妙。
「学生さんらしいですね」
その言葉が、ずっと引っかかっている。
らしいって何や。
まだ子どもってことか。
遥花さんの横に並ぶには、
まだ足りないってことか。
あの夜を思い出す。
「安心していい?。」
あの声。
あれは、軽く受け取る言葉じゃなかった。
“いなくならない?”
って聞かれてるのと同じや。
でも。
現実は、甘くない。
就職先次第で、住む場所は変わる。
忙しくなって余裕がなくなる。
社会人三年目の彼女は、もう社会の中にいる。
俺は、まだ入口。
距離が開く可能性は、ゼロじゃない。
だからこそ。
待たせる気はない。
待ってもらう前提にしたくない。
時間がないなら、作る。
距離ができるなら、縮める。
言葉にしないと、不安は膨らむ。
あの人は考えすぎるから。
机に向かう。
エントリーシートを開く。
志望動機を書く。
指が止まる。
“将来どんな社会人になりたいですか?”
一瞬、迷う。
それから打つ。
“信頼される人間になりたい。”
それは企業向けの言葉じゃない。
安心していい?、って聞かれたときに、
迷わず“はい”って言える人間。
忙しいって言いながら、
ちゃんと会いに行ける人間。
触れるときも、進むときも、
選んで動ける人間。
学生らしいですね、で終わらない。
並びたい。
背伸びじゃなく。
並びたい。
スマホが鳴る。
遥花さんから。
『重い。』
思わず笑う。
『知ってます。』
画面を見つめながら、少しだけ息を吐く。
重くていい。
軽い恋は、いらない。
怖さは、ある。
嫌われるのも怖い。
遠くなるのも怖い。
でも。
それ以上に。
失うのが怖い。
だから。
覚悟は、毎日更新。
ネクタイを外しながら、思う。
次の土曜。
会いに行く。
疲れてても。
眠くても。
“待たせる気ない”って言った以上、
言葉だけにはしない。
湊はスマホを起き、目を閉じる。
「ちゃんと隣にいますね。」
自分に向けて小さく呟く。




