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自分だけじゃなかった。
それが、こんなに安心するなんて。
涙が滲む。
言葉が溢れる。
「……やだ。」
自分でも何を言っているのか分からない。
「遠くなったら、やだ。」
湊が少しだけ息を止める。
「会えなくなるの、やだ。」
胸の奥が熱い。
理性が追いつかない。
「好き。」
落ちた。
ぽろっと。
湊の体が固まり顔をあげる。
「……え?」
本気で驚いている。
目が、丸い。
「今……」
自分も遅れて気づく。
今、言った。
好きって。
「ごめん、違う、今のは」
何が違うのか分からない。
でも、動揺しているのは自分も同じ。
湊が、ゆっくり腕を緩める。
離れない。
でも、顔が見える距離になる。
「……もう一回、言ってください。」
かすれた声。
「言ってない。」
苦しい言い訳。
「言いました。」
静かに、断言。
目が真剣すぎて、逃げられない。
呼吸が絡まる。
怖い。
でも。
もう隠せない。
「……好き。」
今度は、はっきり。
逃げずに。
湊の喉が上下する。
驚きと、安堵と、嬉しさが一気に混ざった顔。
深く息を吸う。
「俺にもかっこつけさせてください。」
真面目な顔。
「遥花さん。」
名前を呼ぶ声が、低い。
「俺、最初に会ったときから、ずっと好きでした。」
「大人ぶってるのも、強がってるのも、」
「全部含めて。」
胸が締まる。
「忙しくても、距離が変わっても、」
「俺は、横にいたいです。」
逃げない目。
一歩、近づく。
「俺と付き合ってください。」
軽くない。
勢いじゃない。
胸の奥が、いっぱいになる。
「……うん。」
声が震える。
湊の顔が、ゆっくり崩れる。
安堵と、嬉しさと、少しの照れ。
「もう一回、言ってもらっていいですか。」
「何を?」
「好きって。」
「調子乗るな。」
「録音すればよかった。」
「するな。」
笑いながら言う。
でも、逃げない。
視線を外さない。
「好きだよ。」
今度は、はっきり。
湊の手が、頬に触れる。
温かい。
指先が少し震えている。
「キスしてもいいですか。」
「聞くの?」
「一応。」
「……いいよ。」
触れたのは一瞬だけ。
初めての温度。
離れたあとも、距離は近い。
額が触れそうなまま。
「走ってきてよかった。」
小さく笑う。
境界線の内側。
もう、戻らない。




