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鍋の日から、一週間が過ぎた。


朝の「おはようございます。」

昼の「説明会終わりました。」

夜の「今から帰ります。」


途切れず連絡はある。

だから不安になる理由はない。


ないはずなのに。


――火曜日。


改札の外に出た瞬間、視線が自然に動く。

柱のあたり。

コンビニの前。

信号の手前。


いない。

自分で小さく笑う。


「約束してないでしょ。」

心の中で呟く。


でも、足取りはほんの少し重い。


鍵を回す音が、やけに響く。

部屋はいつも通り。何も変わらない。


変わらないのに、

何かが足りない気がする。


冷蔵庫に白菜が余っている。

包丁を持つ手が止まりあの日の湯気を思い出す。


「雑。」


「文句あるなら切って。」


小さく笑う。


声がない。


静かすぎる。


――水曜日。


昼休み、スマホが震える。


『ES通りました。』


よかった。

胸がほっとする。


『おめでとう。』


指が止まる。


“頑張ってるね。”


“偉いね。”


“会いたい。”


どれも違う気がして、打てない。


画面を閉じる。


応援する立場。

それでいい。


――木曜日。


夜、テレビをつけたままソファに座る。


画面の中で笑い声が響く。

自分は笑っていない。


スマホを見る。

既読はついている。

返信はまだ。


きっと面接対策だろう。


頭では分かる。


それでも、


胸の奥に小さな棘みたいなものが刺さる。


“今”じゃない。


“今”が共有されていない。


それだけで、落ち着かない。


――金曜日。


雨の中、傘をさして歩く。

水たまりを避ける。


ふと、横に誰かいないかと視線が動く。


いない。

当たり前だ。


でも、

並んで歩く距離を想像してしまう。


スマホを開く。


『今終わりました。』


少し遅れて届く、たった一文。

たったそれだけなのに、

肩の力が抜ける。


画面を見つめたまま、ふと思う。


もし、来年。


遠くなったら。


今みたいに、ふらっと来れなくなったら。


この一文を待つ夜が、当たり前になる。


それは、

少しだけ、寂しい。


違う。


寂しい、じゃない。


落ち着かない。

胸の奥が、静かにざわつく。


スマホを握りしめたまま、呟く。


「……会いたい。」


小さな声。


誰も聞いていない。


自分だけが、聞いている。


はっとして、顔を上げる。


忙しいんだから。


応援してるんだから。


そんなこと、言う立場じゃない。


でも。


“会いたい”は、


思ったより、自然だった。


ただ、


この部屋に、あの声がないと、


少しだけ、広すぎる。




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