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目を開くと天井の色がいつもより明るかった。
カーテンの隙間から、柔らかい光が差し込んでいる。
小さな音がする。
昨夜のことがゆっくりと戻ってくる。
家の前。
声。
抱きしめられた腕。
「当たり前になっても、消えへん。」
息を吸う。
ちゃんと朝だ。
リビングに出ると、湊がフライパンを傾けていた。
寝癖が少し残っている。
「起きましたか。」
振り向いた顔は、昨日と同じ人なのに、
少しだけ大人びて見える。
「……何してるの。」
「焦がしかけました。」
真顔で言う湊に
つい笑ってしまう。
卵の端が少しだけ固い。
パンは少し焼きすぎ。
でも、それが妙に愛しい。
椅子に座ると、湊が対面に座る。
距離は保ったまま。
踏み越えない。
「……ありがとう。」
パンをかじりながら言う。
湊はうなずく。
「今日は送ります。」
怖さは完全には消えていない。
でも。
一人じゃないという実感は残っている。
この体温が、少しだけ強くしてくれる。
玄関のドアを開ける、湊が言う。
「……昨日のこと、後悔してないです。」
振り返る。
目はまっすぐ。
「泣かせたことは反省してますけど。」
真面目に言うから、また笑う。
「後悔してない。」
私も、言う。
それが、今の答えだった。




