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湯気が、ゆっくりと揺れている。


差し出されたマグカップを受け取るとき、

指先が少しだけ触れた。


ほんの一瞬。


それだけで、さっきの腕の感触が蘇る。


熱い。


「……甘い。」


言うと、湊が小さくうなずく。


「いつもより多めです。」


覚えていることが、今は少しだけくすぐったい。


カップを両手で包む。

手の震えはもう止まっている。

さっきまであんなに怖かったのに。


部屋は静かだ。

エアコンの音。

遠くの車の走る音。

生活の音が、ちゃんとここにある。


「……泣きすぎました。」


自分から言う。

笑ってごまかそうとするけど、声がまだ掠れる。

湊は少しだけ視線を柔らかくする。


「ええと思います。」


それだけ。

からかいもしない。

慰めもしない。

ただ、肯定。


それがまたずるい。

ずるいけど、ありがたい。


湊がカップを置き

何かを考えている顔。


「今日。」


その声の低さに、自然と顔が上がる。


「泊まってもいいですか。」


一瞬、時間が止まる。


目は真っ直ぐ。

欲はない。

確かめる目でもない。


ただ、心配がそこにある。


「……何もしません。

心配なんで。」


私は、一瞬だけ迷う。

一人で寝ることはできる。

きっと。


でも、さっきの声が、背後に残っている。


「客用の布団、貸してください。」


ちゃんとしてる。

ちゃんと距離を置こうとしてる。


それが逆に、胸に来る。


「……ん…ありがとう。」


言った瞬間、湊の肩がほんの少しだけ下がる。

それを見て、なぜか私も息を吐く。




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