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「……遥花さん」
声、低い。
「はい?」
「それ、あんまり言わないでくださいね」
「なんで」
視線が絡む。
その目が、ちょっとだけ余裕を失っている。
「更新されるんで」
「なにが」
「好きが」
一歩、近づく。
「四年前より好きなんですよ?」
「うん」
「だから、四年前より余裕ないです」
遥花が吹き出す。
「なにそれ」
「笑わないでください」
少しだけ眉が寄る。
でも怒ってない。
焦ってる。
「選んでるって言ったじゃないですか」
「言ったね」
「選び続けた結果がこれです」
ぐっと、腕が腰に回る。
抱き寄せる力が少し強い。
「四年も経って、
まだこんなに好きってどういうことですか」
「知らないよ」
「俺も知りません」
顔、近い。
息が混ざる距離。
「遥花さん」
「なに」
「今日くらい、遠慮しなくていいですか」
遥花の心臓が跳ねる。
「……記念日だもんね」
小さく言うと、湊の目が揺れる。
一瞬だけ、理性が外れる。
そのまま、ひょい、と抱き上げられる。
「ちょ、湊?」
「四年目の特典です」
「なにそれ」
「更新特典」
言いながら、ソファに座り直して遥花を膝に乗せる。
「可愛いとか、かっこいいとか」
耳元で低く言う。
「四年前より破壊力あるんで」
「……湊」
「はい」
「五年目も、ずっと一緒にいる?」
「います」
「五年目も、十年目も」
「ずっと更新します」
そのまま、ゆっくりキス。
深くはない。
でも長い。
四年分の好きが、静かに重なる。
離れたあとも、距離はゼロ。
「四年前より」
湊がもう一度言う。
「大事です」
抱きしめる力が、少しだけ震えている。
記念日だから。
今日は、少しだけ余裕を手放していい。




