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休日の午前。
珍しく早起きした湊が玄関に立っている。
「どこ行くの?」
「講習です」
「ほんとに行くんだ」
「行くって言いましたよね」
靴を履きながら淡々。
「ペーパー歴何年?」
「取ってから一回も運転してないので、実質ゼロです」
「こわ」
睨まれる。
「だから講習行くんです」
玄関のドアを開ける前、少しだけ振り返る。
「迎えに来る練習ですから」
「……別に迎えいらない日もあるけど」
「俺が安心したいだけなんで」
ずるい。
数時間後。
「どうだった?」
帰ってきた湊は、少しだけ疲れた顔。
「想像以上に下手でした」
「え」
「エンストはしませんでしたけど」
「けど?」
「左に寄りすぎるって三回言われました」
思わず吹き出す。
「笑わないでください」
「だって」
「慣れればいけます」
「自信ある?」
「あります」
「助手席、座れます?」
試すみたいに聞く。
湊は一瞬だけ間を置いてから、真っ直ぐ見る。
「遥花さんなら」
その一言で、もう十分。
「じゃあ、早く慣れてね」
「はい」
小さく頷く。
「絶対、迎えに行きますから」




