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騒々しい学食、湊は相変わらずカレー。
「またそれか。」
「迷ったらこれ。」
「人生迷ったらどうすんの。」
「迷わん。」
女子二人が近づいてくる。
「悠くん、この前のレポート助かった、ありがと。」
「いいよ。」
「今度飲みいこ?」
「予定合えば。」
嘘は言わない。
でも約束もしない。線は引いている。
「湊くんもいこうよ。」
「その日バイト。」
「彼女いるの?」
俺は横目で湊を見る。
湊は水を飲んでから言う。
「いる。」
女子の目が丸くなる。
「え、ほんと?」
「うん。」
「同い年?」
「ちゃう。」
「年上?」
「まあ。」
それ以上広げない。
線を引くのがうまいわけじゃない。
最初から入れてない。
女子たちは諦めて去り、静かになる。
俺は湊を見る。
「まだ彼女じゃないだろ。」
「まだな。」
迷いがない。
悠は小さく笑う。
「強気。」
「強気ちゃう。」
湊は視線を遠くに向ける。
「決めただけ。」
勢いの顔じゃない。
前に見たやつとは違う。
分かった上で言ってる顔だ。
「そっか。」
それ以上言わない。
言う必要もない。
こいつは冷たいわけじゃない。
優しいし、気も利く。
でも、選ばない。
視界が狭い。
一人しか入れてない。
それが強みで、弱みでもある。
境界線は大学にはない。
でも。
あいつの中には、もう一本引かれている。




