12
遥花の家、コンビニ袋がテーブルに並ぶ。
「誰だようすしお二袋買ったの。」
悠が袋をあさる。
「俺や。」
「デブまっしぐら。」
「太らん体質です。」
「腹出たら追い出すからな。」
いつもの調子、遥花は笑う。
この空気は楽だ。
何も考えなくていい。
悠はポテチを口に入れながら、ちらっと湊を見る。
「最近さ。」
「ん。」
「お前静かすぎん?」
「うるさいよりマシやろ。」
軽い応酬。
でも悠は目を逸らさない。
「いや、なんか企んでる顔。」
「なんも企んでへん。」
「前はさ、もっと分かりやすかったじゃん。」
湊が眉を上げる。
「何が。」
「好き好きオーラ。」
遥花がむせる。
「ちょ、」
「今はな。」
悠はポテチをつまみながら続ける。
「本気の顔してる。」
湊は一瞬黙る。
笑わない、逸らさない。
「最初から本気や。」
関西弁が少しだけ低い。
悠は肩をすくめる。
「いや、最初は勢い。
今は覚悟?」
空気が一瞬だけ止まる。
悠はすぐに遥花を見る。
「お前もな。」
「なに。」
「最近、否定が早い。」
「してない。」
悠がにやっとする。
「ほら。」
遥花が視線を逸らす。
湊は何も言わない。
そこがまた、腹立たしい。
悠は立ち上がる。
「まあ俺はどっちでもいいけど。」
コンビニ袋をまとめ悠はキッチンへ行く。
残された空気。
遥花は湊を見ない。
でも、さっきの言葉が残る。
勢いじゃない。覚悟。
日常は続いている。
ポテチの匂いも、テレビの音も変わらない。
でも。
三人の位置は、少しだけ動いた。




