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……やばい。
距離、温度、匂い。
全部、まだ残ってる。
「……先どうぞ、って」
自分で言っといて、意味わからない。
ソファに腰を下ろす。
落ち着け、って言い聞かせるけど、全然落ち着かない。
視界の端に、さっきの姿がちらつく。
ドレスのライン。
髪。
首元。
「……無理やろ」
小さく、吐く。
ちゃんとしたいと思ってるのは本当だ。
雑に触れたくない。
大事にしたい。
だから、一回離れたのに。
シャワーの音が聞こえる。
その音が、逆に意識を引っ張る。
……いる。
同じ空間に、いる。
さっきまで、触れてた。
それが急に遠くなる感じ。
でも、完全に離れたわけじゃない距離。
中途半端に残される方が、きつい。
「……ほんま、無理」
顔を覆う。
深呼吸しても、全然意味ない。
頭の中、全部さっきのまま。
我慢しろって言われてるみたいで。
でも、その原因作ったの自分じゃない。
「……いや、俺やけど」
苦笑が漏れる。
あんな顔されたら、無理に決まってる。
わかっててやってるわけじゃないのも、わかってる。
だから余計に、ずるい。
湊の指先が、無意識に握られる。
触れた感覚、まだ残ってる。
「……あかん」
立ち上がる。
座ってると、余計に考える。
でも動いても意味ない。
ただ、落ち着かないだけ。
シャワーの音が止まる。
一瞬で、空気が変わる。
やばい。
今出てくる。
わかってるのに、どうにもならない。
さっき、自分で言ったはずなのに。
――待ちます。
「……待てるかよ」
小さく吐いて、視線を落とす。
ドアの向こう。
あと数秒、




