120/185
116
隣で寝てる湊の寝顔を見ながら、考える。
「ちゃんとしたい」って言ってた。
でも。
それって本当に、
形式の話なんだろうか。
思い出す。
これまでのこと。
言葉にして、
行動にして、
ちゃんと積み重ねてきた人。
曖昧にしない人。
逃げない人。
小さく息を吐く。
ああ、そうか。
“ちゃんとしたい”んじゃなくて、
“ちゃんと届けたい”んだ。
自分の気持ちを。
覚悟を。
未来を。
見える形で。
残したいだけなんだ。
「……ずるいな」
ぽつりと呟く。
そんなの、分かってしまったら。
無視なんて、できない。
キッチンに立つ湊の背中。
「おはようございます」
いつも通りの声。
いつも通りの距離。
「……湊」
「はい?」
振り返る。
少しだけ、迷ってから。
「式」
その一言で、湊の動きが止まる。
「全部ちゃんとは無理かもしれないけど」
続ける。
「一緒に考えよう」
ほんの少し、目が見開かれる。
「……いいんですか?」
「うん」
小さく笑う。
「どうせやるなら、ちゃんとやろっか」
その言葉に。
一瞬、言葉を失ったみたいに黙って。
それから、
「……はい」
いつもより、少しだけ柔らかい声で返ってくる。
その顔を見て、思う。
ああ。
この人はきっと、
ずっとこうやって、
“ちゃんと”を積み重ねていくんだろうなって。
その隣に、
自分もいるんだろう。




