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年明けは、あっという間だった。


「今年もよろしくお願いします」

なんて、どこでも同じような挨拶をして。


遥花の実家にも顔を出して、

湊の実家にも一緒に行って。


少しだけ緊張して、でも思っていたより穏やかに過ぎて。


「……ちゃんと、終わりましたね」


帰り道、湊がぽつりと言った。


「なにが?」


「いろいろです」


曖昧に笑う。


その横顔を見て、


「ああ」


と、少しだけ納得する。


「うん。ちゃんと進んでるね」


そう言うと、


「はい」


って、短く返ってくる。





四月。

朝の空気が、少しだけ新しい。


「橘、ちょっといいか」


呼ばれて顔を上げる。


「はい」


席を立って、先輩のデスクへ向かう。


「来期の体制なんだけどさ」


資料を一枚、差し出される。


「これ、お前の名前な」


視線を落とす。


「……」


一瞬、言葉が止まる。


そこに書いてあるのは、


今までとは違うポジション。


明らかに、ひとつ上。


「……あってます?」


思わず聞くと、


「間違ってたら出さねぇよ」


軽く笑われる。


「今回からここ任せるから」


さらっと言う。


でも、その“ここ”が軽くない。


「責任増えるけど」


一拍置いて、


「まぁ、お前ならいけるだろ」


その言い方は、期待でもプレッシャーでもなくて、


ただの事実みたいだった。


「……はい」


短く返す。


「よろしくお願いします」


そのまま頭を下げる。


「おう、頼んだ」


軽く背中叩かれる。


それだけで、終わり。


特別な演出なんてない。


でも——


自分の席に戻って、座る。


もう一度、さっきの資料を見る。


名前。


ポジション。


任される範囲。


全部、ちゃんと変わってる。


「……」


息を吐く。


不安がないわけじゃない。


でも、


それ以上に——


「……やるか」


自然に、そう思えた。


少し前の自分なら、


“できるか”を考えてた。


今は違う。


“やる”が先に来る。


「橘、さっそくなんだけど」


後ろから声。


「はい」


すぐ振り返る。


「この案件、お前主導でいってみるか?」


「はい、やらせてください」


迷わず答える。


そのまま資料を受け取って、


立ち上がる。


歩き出しながら、


ふっと思う。


——ここまで来た。


まだ途中だけど、


ちゃんと前に進んでる。


ポケットの中で、スマホに触れる。


画面は見ない。


でも、


浮かぶ顔は、ひとつだけ。


小さく息を吐いて、


前を見る。


「……やっと言えるな」


誰にも聞こえないくらいの声で。


そのまま、仕事に戻る。




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