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仕事帰り、まっすぐ帰る気になれなくて。

駅ビルの中を、なんとなく歩く。


特に用事はないのに、足だけがゆっくり進む。


ふと視界に入った

ランジェリーショップ。


「……」


一瞬だけ迷って、そのまま通り過ぎようとする。


でも。


数歩進んで、足が止まる。


「……別に、いいよね」


誰に言うでもなく、小さく呟いて、引き返す。


店内は静かで、少しだけ落ち着かない。


並んでいるそれを、手に取る。


「……こういうの」


自分には、どうなんだろう。


似合うとか、似合わないとか。


一瞬よぎるけど、すぐに消す。


違う。


そうじゃない。


「……ちゃんとしたいだけだし」


ぽつりと落とす。


あの時の言葉が、まだ残ってる。


雑にしたくない。


だったら。


自分も、ちゃんと向き合いたい。


派手すぎないもの。


でも、少しだけ特別なもの。


指先で確かめて、ゆっくり選ぶ。


「……これにしよ」


決めた瞬間、少しだけ照れる。


レジに持っていくのも、少しだけ恥ずかしい。


袋を受け取って、外に出る。


冷たい空気に触れて、息を吐く。


「……なにしてんだろ」


小さく笑う。


でも、悪くない。


むしろ。


少しだけ、楽しみだった。





「……すみません」


仕事終わりに、そのまま花屋に入る。

少しだけ、息を整える。


「記念日ですか?」


店員に声をかけられて、


「……まあ」


短く答える。


並んでいる花を見て、少しだけ思い出す。


「来年は、もっと大きいの贈ります」


あの時の自分。


別に、大きさに意味があったわけじゃない。


ただ。


「……」


今は、少し違う。


ゆっくり見ていく。


派手なものじゃなくていい。


ちゃんと選んだって思えるもの。


「これ、お願いします」


落ち着いた色合いの花束。


「包みますね」


その言葉に頷いて、少しだけ息を吐く。


「……ちゃんとしたいんで」


小さく呟く。


誰に聞かせるでもなく。




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