13:緊急招集
コミカライズ第二章、始まりましたね!
ちなみに、私は原作担当しておりませんので、ご留意くださいませ(監修はしておりますが)
こちらの物語は書籍版の続きとして、『ルナリア』の物語の続きを書いたものになります。
Web版の続きは!? って言ってくださっている方が多かったので、「よっし書くか!」と思い立って書き始めたものになります。
『ルナリア』がどうなっていくのか、お楽しみくださいませ。
マナが『目が痛い』とジタバタ暴れながら騒いでいるのと同時刻、ルナリアが何か放ったかと思えば特に目立ったことがあったわけでもなく、ミトスもキールも、はて、と首を傾げていた。
「ソルフェージュ公、何を……」
「覗き見をしていた馬鹿に、ちょっとね」
「何をしたというのか教えんか!」
何でこいつ無駄に偉そうなんだ、とルナリアが若干イラッとした気持ちを隠さずにキールをぎろりと睨んでみると、『あわわ』ととても小さいながら何とも情けない声を出して震えている様子に『あー、こいつ強い人に対してはとんでもなく弱いな』と察した。
とはいえ、続編とはいえ他国の王。
揉め事を起こしたらこれ幸いとイクシス国王がどんな無茶ぶりわしてくるか分からないし、と考えたルナリアは、はぁ、と困ったように溜息をつきながら解説をすることを選んだ。
「ですから、遠見の水晶を使って覗き見をしていた馬鹿に対して、目潰しをしただけです」
「え?」
「閃光弾……といっても、とても小さなものですし、わたくしたちには何も影響はございません。陛下も目が痛くなるなど、何もございませんでしたでしょう?」
「あ、あぁ。言われてみれば」
うんうん、と頷いているキールに、ルナリアはにっこり、と音が出そうなほどしっかりと微笑みかけ、言葉を続けていく。
「恐らく、あちらはバレないとでも思っていたのでしょうね。あぁそれから、遠見の水晶を使用しているのは間違いなく我が国の馬鹿…………ごほん、聖女マナかと存じます」
「(お前今馬鹿って言ったな)」
「(うふふ、何のことかしら。ちょーっとお黙りあそばせ)」
むぎゅ、とこっそりミトスの足を踏んだルナリアは、笑顔を崩さないまま更に言葉を続けた。
「失礼いたしました、国王陛下。恐らく、聖女マナは二種類の魔力を流して、こちらの国の聖女様が使用できなかった『遠見の水晶』を使ったのではないか、と思われます」
「なんだと!?」
「使うための条件として推測されるのは、『魔力を流すこと』ではございませんか?」
「そ、そうだ!」
「であれば、普通の人は流すでしょうね。『普通』の魔力を」
「……!」
そうか、と言わんばかりに反応したキールに対して、ミトスは踏まれた足をこっそり労りながら『こいつ畳み掛けてやがる……』と毒づいたが、めちゃくちゃ小さい声だったにも関わらず、しっかりルナリアには聞こえていた。
「……ごめんて」
「あら、わたくしなーんにも言っておりませんわ」
おほほ、とわざとらしく笑ったルナリアは、キールに向けてまた言葉を紡いでいった。
「さて、陛下。もしかして……と推測でお話させていただきまして恐縮ではございますが、こちらの国の聖女様に対しては、たった一度きり魔力を流して、使えなかったことに対して皆様で糾弾したのでは……?」
「うぐ」
「せめてもう一度くらいは機会を与えませんと……」
「それ、は」
その通りである。
一度目で駄目、ということがあれば、それ以外も同じようにして当たり前。
だが、何故だろうか。セラフィナに関してはたった一度の失敗を、まるで鬼の首をとったかのように烈火のごとく責め立てたのだ。
もう一度チャンスをください、というセラフィナに対して、『うるさい、このまがい物の聖女モドキが!』と国王であるキールが先陣切って責め立てたものだから、貴族もそれに続いた。
その結果、学園にてセラフィナに対してのとんでもない私刑が行われてしまい、一時的に意識不明となった彼女は、そのまま文字通り『魂が絶望して消え去った』のだ。
さすがにここまではルナリアは推測していなかったのだが、魂が消え去った器に、転生先を探していた本来のルナリアがすっぽりとおさまった、というわけである。
「では……我の、発言は……」
「恐らく、という言葉を重ねて恐縮でございますが、こちらの国の聖女を追い詰めただけ、でしょうね。ちなみに、聖女様のご実家に対して何か圧をかけたなどは……ございませんわよねぇ?」
「そ、それはしていない!」
「あら、それはようございました」
ほほ、とルナリアは冷静に、淡々と、だが、しっかりと理解できるようにきちんとキールに対して言い含めていく。
お前のとった行動は間違いだったんだ、と認められるように誘導しながら、隣にいる宰相ががたがたと震えているのは無視して、更にルナリアは言葉を紡いだ。
「陛下……もし可能であれば、聖女に対して再度要請してはいかがですか?」
「何、を……」
「『遠見の水晶』が使えるのかどうか、です。流す魔力の種類さえ変えれば、恐らく……ではありますが、こちらの聖女さまであっても問題なく使用できるはずです」
「そ、そうか……そうだな!」
「(ちょろいわね)」
「(おい)」
ハン、とこっそり鼻で笑ったルナリアを諌めつつ、ある意味ルナリアの思い通りにことが進んでいる件に関しては、ミトスはホッとした。
恐らく、『物語』が終わっているからこそ、強制力とも取れるものは何も働いていないのか、あるいはルナリアがあまりにも規格外なために働いているが効力がないのか、のどちらかだろう。
ミトスは直感で後者だと思っているのだが、エンディング後……というか、メインイベントである断罪が終わっているのならば、何らかのエンディングに向けてのみ進行していくものだ。
だから、介入もある意味しやすくなっている、といっても過言ではない。
「陛下、ちなみにこちらの聖女さまのお名前は……」
「ん、あぁ。セラフィナだ。セラフィナ・アニムンディ」
「(やっぱり続編だった、よし!)」
必死こいて推しであったルナリアを救うためにどうにか出来ないか、とありとあらゆるルート検索をしていたけれども、続編のチェックもしていたのは良かったのかもしれない。
ざっくりではあるが、知識として入れられているから、聖女の名前や悪役令嬢の名前も分かる。あとは、マナがどちらに肩入れしたのかを推測できさえすれば、ルナリアがどちらに対してサポートをするのか。
「……では、改めて聖女セラフィナをお呼びになるのはいかがでしょうか。あぁそれと、『遠見の水晶』も用意して、第三者の目がある中で再度力を流していただければ……」
「……なるほどな!」
「へ、陛下、あまりにもそれは……!」
宰相が慌てて止めに入るが、ここまで来ればキールは素直にルナリアの言うことを聞いてくれる存在だ。
はぁ、とわざとらしくルナリアが溜息をつきながら最小に視線をやって、口を開いた。
「まぁ、どうして拒否なさるの? まるで、聖女セラフィナ様のご名誉を踏み荒らしたままで良い、……いいえ、その方が良いとまで仰っているようだわ」
「いや、あの……っ」
宰相は、レアンドラがこっそりと王宮の宝物庫から『遠見の水晶』を持ち出したのを見ていたのだ。
本来あれは、持ち出し禁止とされているのだが、『どうしても必要なことなの!』と公爵令嬢に縋られては悪い気はしなかった……らしい。何かあればこの件を使って、金でも引っ張ってやろうと思ったのか何なのか、とにかく悪い考えを持ってしまったのは事実。
今ここにありません、など言えるはずもなく、宰相はルナリアとミトス、そしてキールからの視線を引き受けることとなったのだ。
「そ、その」
「用意しておけ。明日にでもセラフィナを召集する!」
「それがよろしいかと存じます。……さて、ちょっと失礼します。陛下、そして宰相様、少しお耳を塞いでおいてくださいませ」
「?」
はて、と首を傾げたものの、ルナリアの言葉に素直に耳を傾けた二人は、言われた通りに耳を塞いだ。
ミトスも耳を塞いだのを確認してから、ルナリアは声に魔力を乗せて、遠見の水晶により覗かれていた方に向け、大きく声を放った。
「聞こえているわよね、明日、遠見の水晶を使うから持ち出しているのであればさっさと返却なさいませ! どこの誰か知らないけれと、返却しないと不味いことになることくらい、ご理解できているわよねぇ!?」
それは、マナやデイル、レアンドラの所にまでしっかり届いていた。
ようやく目の痛みが落ち着いてきたマナは、聞き覚えのありすぎるルナリアの声に、がたがたと震えつつも、レアンドラの方をばっと慌てて見た。
「レアンドラ様、これ、早く返しましょう!」
「え、えぇ、そうね!」
「王太子殿下にもご協力願えれば……」
デイルの発言に、レアンドラはハッとする。
そうだ、セシリオに協力してもらえたら水晶を戻すことも容易だし、何かあったとしても『殿下に宝物庫を少しだけ見学させてもらっていた』という理由付けができる、と考え、すぐさま頷いて専属メイドを呼びつけた。
「お呼びでございますか、お嬢様」
「殿下にすぐ連絡を取りたいの、手紙を書くから用意なさい」
「かしこまりました」
すぐに、を強調して言っておいたから、多分大丈夫だろう。レアンドラは頭の中を整理しつつ早めに連絡を取らなければと焦りながら、水晶から聞こえてきた意志の強そうな声を思い出して、ぶるりと体を震わせたのだった。
そして、その少し後のこと。
「……何、これ」
「お嬢様……行かないわけには……」
「そう、よね」
王家からの緊急招集だ、と伝令文を持って駆け込んできたエマと共に中身を見たセラフィナは、はぁ、ととてもとても大きな溜息をついたのだった。
「緊急招集……って……今更どうして……?」




