12:みぃつけた
コミカライズ第二章、始まりましたね!
ちなみに、私は原作担当しておりませんので、ご留意くださいませ(監修はしておりますが)
こちらの物語は書籍版の続きとして、『ルナリア』の物語の続きを書いたものになります。
Web版の続きは!? って言ってくださっている方が多かったので、「よっし書くか!」と思い立って書き始めたものになります。
『ルナリア』がどうなっていくのか、お楽しみくださいませ。
ルナリア、ミトス、双方真顔でエレディア国王であるキールと向き合っていた。
空気はひりついているし、双方、緊張感のある中で対峙している中、ルナリアがすっと口を開く。
「まぁ、そんなに怖いお顔をなさらないでいただきたく存じますわ」
「……」
「だって、こちらは犯罪者を引き取りに来ただけなんですもの」
そう言われたとて、おとなしく引き渡せるものか、どう返事をして良いのかキールは悩んでいた。
そもそも、マナやデイルがこのエレディア王国にいる、だなんてことも判明していない。まずはそこからきちんとさせておかないと、イクシス王国が暴走した結果、とりあえず隣国からしらみ潰しに探していくんだ、と言ったのではないか、という風にしか思えなくなってくる。
「……しかしなぁ、ソルフェージュ公」
「何でしょうか」
「その……貴国の聖女と第一王子殿下が、我が国にいるだなんていう事実はあるのだろうか」
「……」
「確証があるのではなく、『ここにいるのでは』とあたりを付けてきているだけ、なのだとしたら……国際問題に発展しかねんぞ? んん?」
さぁどうだ、と迫っていくキールに対して、ルナリアとミトスはにこやかに微笑んでから、双方顔を見合わせて頷いた。
「……確証なら、ありますが」
「ええ、そうね。アストリア公、お出ししてくれる?」
「はい」
二人の会話を聞いていたキールは、『は?』ととんでもなく間抜けな声と顔を披露し、ぱかりと口を開けてしまう。慌てて閉じるが、ミトスが懐に忍ばせていた魔道具のスイッチを入れると、ぱっと空中に地図が表示され、エレディア王国に二つ、明るい点が見えていた。
「これ、は」
「魔力探知機です。この二つの点がマナ、デイル殿下のものとなります」
にこやかに説明しているルナリアに対して、キールはわなわなと震え始める。こんなちっぽけなもので二人がここにいる、と決めつけたのか、と勢いよく立ち上がり、鼻の穴を膨らませて大声で喚き出した。
「たかがこんなもので!?」
「まぁ……」
「こんなもの、いくらでも偽造できるではないか! 貴様、我が国をおちょくるのも大概に……」
「本物ですわよ?」
「だから、その証拠を見せろ!」
「……」
困ったなぁ、とでも言わんばかりの仕方の無さそうな表情を浮かべたルナリアは、ミトスの手の中にある魔道具を何やら操作し始めた。
「こうだったわよね」
「そうそう」
二人は話しながら設定を少しだけいじり、そうしてキールにまた示す。
「では、こちらを」
「はっ、お前らに都合のいい言い訳でも…………」
「こちら、わたくしの魔力反応にございます」
慣れた手つきでルナリアが画像を拡大していけば、エレディア王国の王宮あたりに示されている赤い点と、黒い点。
え、あれ、とキールは目をぱちぱちさせているが、ルナリアやミトスからはおかしな魔力反応も検知されていないし、ただ魔道具を弄っていただけなのだ。
「わたくしの魔力反応は、こちらの赤い点。アストリア公の魔力反応は黒い点。動けば点も動きます」
詳細な地図データを持っているのはそれはそれとして、先程まで表示されていなかったのに、とキールも宰相もぽかんとしている。
「面倒だったので、目標の魔力反応だけを追尾させておりました。そもそも、こちらの魔道具が開発された際、犯罪者の居場所特定のために使おうということで、我らが先だって実験に協力させていただいております。まぁ……」
クス、とルナリアは小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、またマナとデイルの魔力反応の表示に切り替えた。
「この方々、わたくしたちが何かをすれば『仲間はずれとはいい度胸だ!』と大層お怒りになられて……勝手に魔力登録をしていただきまして、えぇ」
ころころと笑うルナリアは、愉快で仕方がない、という顔をしている。
現状、この魔道具に登録されてるのは、ルナリア、ファリトゥス、アリシア、ミトス、だけの予定だったのだ。
そこに割って入ってきたのはマナとデイル。
俺たちが知ってはなにか不都合があるというのか、とか何とか言いながら、あくまで実験だ、と伝えたにも関わらず無理やり関わってきたのだから、ルナリアたちは何も悪くない。
むしろ今となっては『登録してくれてありがとう、馬鹿どもめ』くらいにしか思っていない。
「履歴を辿ることもできるようになるんですって、……とぉっても便利……でございましょう?」
ニィ、と微笑んだルナリアが放った一瞬の殺気に、キールも宰相も顔色を悪くさせているが、マナとデイルが居ることが分かればこちらのものだ。
あとは引き渡しに応じてもらうだけ。思っていたより簡単な仕事だったな、とミトスと視線を交わしていると、キールがばっと手を横に払った。
「ええいふざけるな! 仮に貴国の第一王子と聖女とやらは、何の罪を犯したというのか! いいか、我が国でも先日冤罪事件があり、聖女とかいう存在を罰したばかりなのだぞ!」
「…………冤罪事件?」
ルナリアはミトスと顔を見合わせる。
まさか、そんなことがあっていいはずがない、とルナリアが訝しげな顔をしているのを見たミトスは、すっと一歩、前に出た。
「失礼を承知で伺いますが……それは一体、どのような?」
「聖女が、我が国の公爵令嬢に対して働いたのだ。とんでもない無礼をな!」
「……ええと、物的証拠など、は……」
「罰したのは我が息子だ。詳しくはやつに聞け。だがな、その罰した聖女とやらもお前たちと同じような事をほざいていたそうだ!」
「は?」
一体何を言っているんだ、とルナリアもミトスも訝しげな顔になるが、二人ともに心当たりがあった。
ルナリアから出国前に、ミトス、ファリトゥス、アリシアに話された内容。
マナが『次のゲーム』のヒロインに接触して、イクシス王国での立場の回復を狙っているのでは。マナが前作主人公としてあれこれ助言をし、断罪までを爆速で終わらせてしまっているのであれば、ルナリアの立場だった悪役令嬢が正義とされ、『聖女』が断罪されている可能性がある、というもの。
「(……やりやがったのか)」
「(えぇ、そうよ。まぁでも、読みが甘いのはあのマナらしいけれど……)」
ふーふーと鼻息荒く言ったキールを見ていたルナリアだったが、ふと視線を外してぐるりと大きく謁見の間全体を見たわした。
「……ところで国王陛下、お話は変わりますが……」
「次から次へと、今度は何だ!!」
「ここ、覗き見されておりますが平気でして?」
「はぁ?」
何をおかしなことを、とまた鼻で笑いかけたキールだったが、ルナリアがじぃ、とある一点を見つめ続けていることを察し、『え、は?』とオタオタしている。
「……そう、そこで見ているのね」
「お、おいお前、一体……」
ルナリアが視線を定め、そして低く呟いた。
「みぃつけた」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ひぃっ!?」
がたん、とマナは座っていた椅子からバランスを崩して転げ落ち、ガタガタと震え出す。
「なんで……どうして分かるのよ!!」
「お、おいマナ、一体何が……」
「ルナリア、私を見つけたんだけど!?」
『見つけた』という単語に、デイルはイマイチピンと来ていないようだったが、レアンドラはぎょっと目を丸くした。
「有り得ない!」
「そうでしょう!?」
「……どうして……遠見の水晶からの視線を逆探知のような、ことを……」
出来てしまうのか、と口を出したくなかったレアンドラは、マナ以上に顔色を悪くしている。
マナの聖魔力で遠見の水晶を起動させていたのだが、ふとデイルは未だ映像を移し続けている水晶を覗き込み、そしてマナ以上に顔色を悪くした。
「デイル様?」
「……まずい」
慌ててマナの方を振り返ったデイルは、遠見の水晶から距離を取ろうとしていた。
水晶に映し出されていた映像の中のルナリアは、凶悪な笑みを浮かべており水晶の方に向かって手を出していたのだ。
「デイル様、何が見えたんですか! あぁもう、私が見た方が早い……」
「やめるんだ、マナ!」
「……え?」
振り返ろうとしたマナの目に、とてつもない閃光が襲いかかった。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
それをまともに食らってしまったらしいマナから、とてつもない悲鳴が上がった。
「あ、…………ぅ、あぁ、目、が……っ、痛い!! 痛いぃぃぃ!!」
ごろごろと転がりながら痛みをどうにか逃がそうとしているマナだったが、とんでもない閃光には敵わなかったようだ。
レアンドラやデイルも閃光に襲われたものの、マナほどの衝撃ではなかったようで、少ししてからじわじわと視界も回復してきたらしい。
だが、マナは違う。
例えるなら、望遠鏡を構えて遠くを見ていた時に、レンズ越しに思いきり太陽を覗いてしまって、眩しさで悲鳴をあげてしまったような、あんな感じだったのだ。
ルナリアは覗き見をしてきている方向を察知し、そちらの方向にとても小さな閃光弾魔法を発生させてみただけ。
謁見の間ではびっくりするくらいの光が起こった訳ではなく、『何だ、ちょっと眩しいな』程度だっから、騒ぎにもなっていない。
「アイツ……許さない! 何なの……規格外の化け物だっていうの!? ふざけてんじゃないわよ、悪役令嬢のくせに! ヒロインには勝てないくせに!」
悲鳴のように叫んでいる内容は、デイルには分からなかったが、レアンドラには何となく理解できてしまった。
だが同時に、絶望も感じていた。
「(この聖女マナが、手も足も出ない人が……追っ手として……来ている、の?)」
絶望の鐘が、がらんごろん、とレアンドラの頭の中で鳴り響いたような、足元から崩れ落ちるような、そんな感覚に襲われたまま、レアンドラはよろよろとマナのところに歩み寄ることしか出来なかったのだった。




