最強の転生者
転生者。
その言葉は遥か昔から存在し得た。
超常の力を操る彼らは、異界からやって来た訪問者であり、彼らの存在は多くの文明社会を発展に導いた。
一時は彼らの存在は秘匿とされたが、十年前に勃発した転生者同士の戦争、転輪戦争によって彼らの存在は露見された。
それを切っ掛けに、今まで秘密裏に活動していた転生者の系譜を持つ家系が台頭する様になった。
時は現代、世は転生者の時代。
妃龍院家。
数多くの転生者を産出して来た家系である。
主に幻獣・龍に纏わる転生者を引き寄せる性質を持ち、当代である女当主は、齢三百年を超える転生者の中でも古株の女傑であった。
先月。
女当主の娘が転生者へ覚醒を果たし、自我が奪われた。
これにより、妃龍院家の次女は妃龍院家に対し宣戦布告を開始。
多くの転生者を集める最中、同士討ちを怖れた妃龍院家当主は断腸の思いで次女を切り捨てる事を決めた。
戦争前日。
本来ならば血を分けた家族を殺す覚悟を決めた女当主の前に、一人の男が次女を連れてやって来た。
『戦争を終わらせた』
その言葉と共に、次女を女当主の前に差し出したのだ。
男も同様に、転生者として覚醒した存在であり、その実力は転生者集団に対し、単騎を以て圧倒し、殲滅をする程の実力であった。
戦争を終わらせた男に際し、女当主は酷く気に入り、その後、男は妃龍院家の門下へ降る事となった。
男の名は佐武創始郎。
未だ底知れぬ実力を秘めた存在であった。
「坊」
妃龍院家当主、妃龍院憂媚が笑みを浮かべて名を呼んだ。
気に入った者に対して呼ぶ呼び方であり、その事から、彼女が余程、佐武創始郎を気に入っているのが分かった。
「はい、龍巫女様」
深々と頭を下げて彼女の声に反応をする佐武創始郎。彼の姿を見ながら、彼女は足を組み直す。
妃龍院憂媚の価値観は三百年を生きた中、多少は現代の常識が染まるが、それでも尚、気に入らぬものがあった。
それは下着である。
自らの肉体を縛り付ける様な拘束具を、彼女は着ける事を嫌った。
同時に、着物を着込んでいるが帯は緩く締めていて、肩が出る程に着崩していて、身体を動かせば乳房がまろび出そうな程に緩めていた。
下には何も履いておらず、彼女が足を動かす度に、太腿の奥の肌色が見える。
当然、恐れ多くも龍巫女様の中を見ようとする愚か者は居ないが。
「うっわ、下履いてないんすか?エッロ」
佐武創始郎は隠す事無く見ていた。
本来ならば打ち首ですらある程の不敬ではあるのだが、妃龍院憂媚はくすりと笑みを浮かべている。
「気になるかえ?なら……あとでゆぅっくり、見せてやろう、愛い坊よ」
妃龍院憂媚は佐武創始郎にベタ惚れであった。




