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罪よりも、力を選んだ日

着いた先はマンションのような建物だった。

「ここは、平和主義者で働く方の寮だ。今日から凜の家はここになる。」

ブラックは淡々と紫凜に説明を始めた。紫凜の部屋は8階にある805号室だ。ここはブラックの部屋でもあり、相部屋だった。そのことが少し気がかりだったが、ブラックはほとんど使っていないということにほっとした。ブラックは仕事が多くあり、家に帰ってくることが少ないのだ。

「明日、9時に迎えにくる。じゃ、おやすみ。」

ブラックは伝言を伝え、帰って行った。一日で色々な出来事があり、紫凜はソファーに倒れ込んだ。疲れがどっと来て、紫凜の目は徐々に閉じていった。

「熱い、熱い。」

莉多の悲鳴が聞こえる。目の前には炎に包まれている莉多の姿があった。紫凜はただ立ち尽くしていた。すると莉多は紫凜の顔を睨みつけ、言った。

「許さない。」

莉多の顔は見たこと無いほど歪んでおりその顔は般若のようだった。はっと恐怖で飛び起きた時には、少しだけ外が明るくなっていた。夢だったことに気づくとはぁと息を吐き、テレビを付けた。すると午前5時の文字が。ソファーから立ち上がり、紫凜は風呂場へと向かった。服を脱ぎ、風呂に入ろうとした紫凜は鏡に映った自分の右の二の腕に痣があることに気づいた。腕をぶつけた記憶はなく、触るとやけどのようなヒリヒリした感覚があった。しかし、紫凜はあんまり気にとめず、風呂に入った。風呂を上がり、冷蔵庫に入っていたゼリーを取り、もう一度ソファーに座った。テレビを付けると昨日の火事がニュースになっていた。そこには一人が死亡と書いていた。そこで自分のせいで莉多が死んだことに気づき、動揺が隠せなかった。直ぐに、チャンネルを変え、全て考えないようにした。まだ午前6時30分だったことから、もう一度眠ることにした。次に目を覚ました頃には午前8時を回っていた。身支度を整え、ブラックの到着を待った。午前9時ちょうどにインターンホンが鳴った。最後に鏡で確認して、家を出た。平和主義者本部はマンションからバスが出ており、20分ほどで到着した。平和主義者本部は他の建物とは比にならないほど大きく立派だった。ロビーには沢山の人がおり、紫凜はブラックを見失わないように必死に背中を追いかけた。エレベーターの前にも沢山の人だかりができていた。この人たちと一緒にエレベーターに乗ると想像した紫凜は眉間にしわを寄せた。しかし、ブラックは人だかりを抜け、誰も並んでいないエレベーターへと乗った。なぜ、このエレベーターには人が並んでいないのかブラックに問うと、

「このエレベーターはA以上じゃないと使えないんだ。」

この話を聞き紫凜はもっと疑問を持った。そんなにA以上は偉い存在なのかと。そして、自分の隣にいる奴はA以上なのかと。一つずつ紫凜は整理するために聞いた。

「そんなにランクが大事なのかよ。それにお前ってそんな強いのか?」

ブラックは答えた。

「そうだよ。ここはランクが全てなんだ。ランクが低ければそれなりの対応だし、高いだけで待遇も変わるよ。」

自分のランクに関しては何も言わなかった。だから紫凜もそれ以上は聞かなかった。会話が終わると同時にチーンと音が鳴り、エレベーターが止まった。そこは先ほどとは違い、とても静かな場所だった。長い廊下に沢山のドアがあった。やっと着いた目的地には、"人事部"の文字が。ブラックがノックし中から返事が。ブラックの後に続き中へ入る。ブラックは1番奥にいたショートカットの女性へと向かって歩いていく。

「お疲れ様です。」

ブラックが女性へと挨拶した。女性は手を止めて、ブラックを見た。

「おつかれ。どした?」

ブラックは少し首を傾げ

「昨日メールしましたが、見てませんか?」

女性はあー、というと今メールを確認し始めた。ごめんと手を合わせると別室へと案内された。紫凜は椅子に座ると、ブラックが耳元で言った。

「俺は仕事があるから、終わったらこれで連絡してきて。」

渡されたスマホをポケット入れ、分かったと返事した。ブラックが部屋を出ていくと、女性が話し始めた。

「初めまして。私は、型なこです。一応人事部で部長してます。これから貴方は平和主義者で働くための試験を受けてもらいます。その試験でランクが決まります。試験内容は基礎しか出ないので安心してください。筆記試験と実技試験の2つです。明日、午前9時から始めます。遅れないようにお願いします。」

説明は端的に終わり、詳しいことはあまり言われなかった。しかし、紫凜は勉強に関しては人並み以上にできたため、あまり何も気にしなかった。ただ、実技試験が何かわからず、質問した。

「実技試験は何をするんですか?」

「木刀を用いた対戦形式で、試験監督との立合により技量および判断力を評価します。怪我などはほとんどしないかとは思いますが怪我をした場合はきちんと処置しますのでご安心ください。」

紫凜は対人経験がほとんどなく、少し不安を感じたがなんとなるかと考えることをやめた。ただ、基礎的な動きは然に教えてもらっているため安心している部分もあった。ぼー、と考え事をしている紫凜になこはまた説明を始めた。

「合格発表はメールにて送らせていただきます。時間は21時ごろになるかと思われます。」

色々なことを説明されたが紫凜の頭には何一つとして残ってはいなかった。紫凜はここに居ることをそこまで考えてはいなかった。それよりも、魔術を学びたかった。そんな様子の紫凜をみて、なこは言った。

「貴方、本当に平和主義者になりたいの?」

その質問に紫凜はピタッと体を止めたがすぐにはいと返事をした。そう、となこはそれ以上は詮索しなかった。説明が終わり、なこに一礼し、部屋を出た。スマホを取り出しブラックに連絡をしようとしたが手を止めた。少し、街に出てみよう。スマホをポケットへと治すと来た道を戻った。ロビーを通り、門を出た。当たり前だが、バリューノーデンスには純血がいない。住んでる者は皆んな黒髪か茶髪だった。自分と同じ髪色を初めて見る紫凜は嬉しさを覚えた。街をぶらりと歩いていた紫凜だが、小さい公園で数人に蹴られたり踏まれたりしている学生を見つけた。昔から正義感が強くあった紫凜は見過ごすことができず、公園へと足を運んだ。

「何してんの?」

突然話しかけてきた紫凜に学生たちは苛立ちを隠さなかった。

「誰だお前。」

1人の男が紫凜の目の前まで来て睨みつけた。紫凜はにこっと笑い挑発した。それに激怒した男は紫凜の顔に拳を当てようとした。しかし、綺麗に避けられてしまう。周りにいた他の生徒もその光景をみて紫凜の元へと寄ってくる。どの拳も紫凜にはかすりもしなかった。その時、急に紫凜はひどい頭痛に襲われた。立ってられなくなり少し体勢を崩すと同時に男が殴りかかった。拳は紫凜のお腹に命中すると紫凜はお腹を抱え地面へと座り込んだ。紫凜が唸ると学生らは皆んな笑った。徐々につよくなる頭痛に紫凜は必死に耐えていた。そんなのお構いなしに1人のおとこが紫凜を蹴った。その瞬間、何かが切れたように紫凜は覚醒した。立ち上がり手を伸ばすと、学生の首が絞まる。触ってもいないのにどんどん息が出来なくなる状況に誰も理解できなかった。抵抗していた学生の体はピクリとも動かなくなった。バタッと学生の死体が地面へと落ちた。学生らは恐怖で動けなかった。次々に魔術により1人、また1人と地面へと転ぶ。紫凜の意識が戻った頃には公園は死体だらけだった。何があったのか紫凜は覚えていなかった。ただ1人、いじめられていた男の子だけがブルブルと震えて紫凜を見ていた。紫凜はその男の子に近づき、

「秘密にしてたね。」

その一言だけ言い残し、公園を出た。公園近くの防犯カメラを1台ずつ魔術で潰し、証拠を残さなかった。帰ろうとした時、スマホが振動した。ブラックからの着信だった。はいっと出るとブラックは心配そうに言った。

「今どこ?部屋帰ったの?」

どう答えようか迷ってると、前から簓が歩いてきた。突然のことで驚きすぐに身を隠した。まだあの公園の近くにいた紫凜は自分が疑われると思ったからだ。ブラックからの電話をすぐに切り、息を殺した。幸い、バレずにすみ、本部へと帰った。ロビーにはブラックがおり、こちらに駆け寄った。

「心配しただろ?どこに行ってたんだよ。」

街を散歩してただけだと伝えるとブラックはほっと息をはいた。あまり心配させるなと怒られたがそれほど疑ってはいなかった。ごめんと謝ると明日の実技試験の練習をしようとブラックから誘ってきた。ついさっき学生らと喧嘩してきたため、あまり体力が残っていなかったが、ここで断るのはと思い、練習に付き合ってもらった。木刀を持ち、ブラックへと当てようとしたが、かすりもしない。紫凜はここまで、ブラックが強いとは思っていなかったため、驚いた。1時間ほど戦ったが結果はぼろ負け。へとへとになっている紫凜とは反対にまだまだやれると言わんばかりの爽やかな顔のブラック。そんな様子を見た紫凜は腹が立ちブラックに言った。

「クロ強いね。ランクなんなの?」

ブラックはへとへとになっている紫凜に水を渡し、言った。

「Sだよ。」

S?1番強いランクじゃないかと怒り気味で言うとブラックは大笑いをし、仕事があるからと去っていった。

紫凜は少し休憩し、家へと帰った。今日もまた、ソファーへ倒れ込んだがさすがにこのまま寝るのは気持ち悪いと感じた紫凜は風呂場へと向かった。風呂を上がりテレビをつけると今日のことがニュースになっていた。学生5人が死亡。莉多の時とは違い、紫凜はニュースを見て笑っていた。久しぶりに魔術が使えたことへの喜びと自分の強さに自信を持てたからだ。

この日から紫凜は少しずつ人の心をなくしていってしまう。

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