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知らなければよかった

不気味な笑みは紫凜の脳内にこびりついた。

「いいよ、お前が選択したのがそいつらならそれを尊重するよ。でも覚えとけ、お前は一生俺から離れられないからな。」

然の殺気はその場にいる全員がはっきりと分かった。紫凜は自分がした選択を少しだけ後悔していた。しかし、考えている間に目を包帯で隠している男が紫凜を担いで、その場を離れた。あまりに一瞬の出来事で紫凜は状況を飲み込めていなかったが、優しく目を包帯で隠している男は言った。

「あの人のことは心配しないでください。必ず後で来るんで。あなたのことは俺が守ります。」

そんな言葉をかけられても誰よりも然を理解していると思っていた紫凜はなかなか安心することはできなかった。すると、目を包帯で隠している男の顔が変わった。周りを気にするように目を左右に動かしていた。その時、急に木の陰から莉多がナイフを持ち二人に襲いかかった。目を包帯で隠している男は腰にあった刀を取り、紫凜を守るように大きく振りかざした。紫凜は戦っている二人を見ていることしかできず、自分の弱さを実感した。しかし、魔術の存在を思い出した紫凜はこれまで然に習った一番強い魔術を莉多に使った。”業火断罪”。手を伸ばし、唱えた。

「業炎焦尽罪屈。」

一瞬にして莉多の体は炎に包まれた。莉多は大きく唸っていた。そこで初めて聞く莉多の声に紫凜は自分がしたことの重大さに気づいた。ただ、戦いをやめさせたかっただけだったのに。目を包帯で隠している男は初めて見る魔術に何が起こったのか分かっていない様子だった。しかし、直ぐに我に返り紫凜の手を取り、山を下りた。手を引かれながらも後ろを振り返ると苦しみもがく莉多の姿に紫凜は目を背けることしかできなかった。下山するとそこには高級そうな車が一台止まっており、乗車するとさきほどいた糸目の男が助手席に座っていた。男は携帯を見ていた手をすぐに止め、紫凜を見てにこっと笑った。

「生きててよかったわ、なんかあったんやろ?」

森で火事があったことがもう街に広がっていた。紫凜は沈黙のまま下を見ていた。そんな様子を見ていた目を包帯で隠している男が代わりに答えた。

「帰ったら報告します。」

糸目の男は駄々をこねたが、目を包帯で隠している男はフル無視をかましていた。糸目の男がずっと喋っているのを紫凜と目を包帯で隠している男、そして運転手は何も反応しなかった。そうすると、突然糸目の男はあっ!と大きな声をあげた。車内の三人はびくっとなり、目を包帯で隠している男が少しいらつきながら糸目の男に聞いた。

「なんですか、いちいち大きな声あげないでください。」

ごめんごめんと笑いながら謝る糸目の男は紫凜を見て

「俺の名前、齋藤簓。で、となりの男がクロやで。」

急に始まる自己紹介時間に紫凜はぽかんとしていたが、クロとよばれる男が大きなため息をついた。

「簓さん、俺の名前クロじゃなくてブラックだから。」

そう言うとブラックは紫凜の目を見て話し始めた。

「すみません。名前伝えてなかったですね。俺はブラック・アームズです。ほとんどの方はブラックと呼んでいます。あなたの名前も聞いていいですか?」

すぐに紫凜は自分の名前を伝えると

「狗麻紫凜ですか、良い名前ですね。」

初めて見るブラックの笑顔に少しだけ紫凜の緊張をほぐした。簓は言った。その名前だとすぐに足がついて危ないと。今からは別人として生きるようにと。何も理解してはいないが、今は従うのが一番良い選択だと思った紫凜はわかりましたといった。

「名前何がいい?」

紫凜は特に希望もなかったため簓に決めてもらう事にした。

「じゃあ、狗を猫に変えて、猫麻凜にしよか。」

紫凜は少しだけ名前を変えることに寂しさも覚えたが、ありがとうございます、と感謝を伝えた。ここから紫凜は猫麻凜としての人生を送ることになる。

その話が終わると、また簓は一人で話し始めた。簓の話を聞いている者はいなかった。紫凜はブラックの名前について疑問を持っていた。見た目は確実にこの島出身だが、名前は”ブラック・アームズ”とこの島の者とは異なっている。このことが疑問に思い、紫凜は聞いてみることにした。

「あの、ブラックさんってこの島の人じゃないんですか?」

少しの沈黙があったあと、ブラックは答えた。

「俺の名前は本名じゃないです。簓さんに付けてもらったんです。」

聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った紫凜はすみませんと謝ったが、ブラックは別に気にしてないとにこっと笑った。ブラックと会話していくと自分と同い年だということがわかり、距離が縮まった。会話を終え、紫凜は眠気に襲われ目を閉じた。次に目を覚ますと、そこは見たことの無い景色が広がっていた。紫凜が住んでいたクリーノーデンスではなく、無血・ー混血が多く住むバリューノーデンスだった。初めて見る光景に紫凜は口をぽかんと空けた。自分が生きている島のことしか知らず、少し紫凜は知らない世界に来たような感覚を覚えた。車の中から紫凜は興味津々にずっと窓から外の景色を見続けた。すると、急に車が停車した。

「降りるよ~」

簓が言った。降りたさきには首が疲れるぐらい大きなビルがあった。気づいた頃には簓とブラックは遠くにいたため、紫凜は小走りでついて行った。建物の正体は役所のようなものだった。しかし、簓はそこを綺麗に通り過ぎ小さな受付のようなところに行き、なにかを話し始めた。すると、奥から見るからにお偉い方がでてき、部屋へ案内してくれた。部屋につき、三人は椅子へ座った。

「少々お待ち下さい。」

そういうと案内してくれた人はドアを閉め、去っていた。周りを見回し、なぜだか緊張していた紫凜を見て、簓は笑っていた。

「そんな緊張せんでええよ。」

けらけらと笑う簓を見て、少しイラッとした紫凜は用意されたお茶をぐいっと飲んだ。するとその時、こんこんとドアをノックする音が聞こえた。簓がどうぞと言うと、失礼しますと同時に綺麗な小柄の女性が入ってきた。小柄な女性は三人の前に座り、簓に挨拶をした。

「お久しぶりです。」

そして、紫凜のことを見てにこっと笑い、自己紹介を始めた。

「こんにちは、私はここ個人情報取り扱いセンターで働いている二胡宮晴です。これから関わること多くなると思うからどうぞよろしく。」

握手を求める晴の手を紫凜は少し見つめ、手を取った。

簓が今まであった出来事を話した。晴は話を手元のパソコンに打ち込みながらうんうんと頷いていた。話が終わると晴は分かりましたと言い、手続きを始めた。

「これから行うことは違法な作業になっています。絶対に武技者には言わないことを約束しtください。これはそのことについて書いてある契約書です。目を通して、紫凜様がサインをお願いします。」

こういう契約書などを読むのは苦痛だったが、嫌々最後まで読み本名でサインをした。そこからは住民票や個人情報などの偽装作業が始まった。最後の作業の頃には紫凜はへとへとになっていた。

「これで全ての作業が終わりました。これからは猫麻凜として生きることができます。」

ありがとうございますの意味を込め、晴に一礼をした。簓は晴と話があるといい、ブラックと共に車へと戻ることになった。簓がいないと喋る人がおらず、紫凜は気まずく感じた。すると、ブラックの口が動いた。

「明日からは平和主義者の登録や高校への入学手続きとか色々あると思う。俺が手伝うからがんばろうな。」

うんと一言だけいい、また沈黙になった。外はすでに暗くなっていた。車に乗る前にブラックのスマホが鳴った。相手は簓からで仕事ができから先に二人で帰ってくれとの連絡だった。二人は車に乗り、平和主義者本部へと向かった。

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