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第三章五部です。三章はこれで終わりです。そして、超絶短いです。
次回、第四章「過去と現在の裏側」
お楽しみに。
「ネ……――ッ!」
わたしは叫びを飲み込んだ。
『森の守護者』の頭上に浮く巨石が、シュッという軽い音の後に、正しく粉になって『森の守護者』の上に落ちたからだ。
「誰?」
ネルが誰ともなく、静かに問いかけた。わたしは、その人物の姿が、どうしようもないほどにはっきりと見え、そしてその人物が誰かわかったとき――言葉を失った。
「ネルとかいったかな、少年。危ないじゃないかね。私がいなければ、あそこで倒れている五人が死んでしまっていたところだ」
「テト様」
「黙っているがいい。いや、撤退してくれないかね」
テトさんは『森の守護者』に命令をした。彼らは一切逆らわずに、その場を後にした。
一体どういうことだろう。
「あなた、確かミナと一緒に住んでる……」
「テト、という」
テトさんはどうでもよさそうに答えた。
「あなたがどうしてここに?」
「自分の娘のような子の親友が大変なことになったら、助けてやるのが人情ってものだろう。自分で言うのもアレだが、私は家族思いの優しい女なのだよ」
茶化すようなテトさんの対応に、ネルはいらだったようだ。けれど、ネルはあくまで冷静に切り返す。
「そういうことではないんですよ。『森の人』のあなたが、今のボクを止められると? そりゃ、止めてくれるのはうれしいですが、無謀ですよ」
「くっくっく」
突然、テトさんが笑い出した。ネルも動揺を隠せず、目を見開いてテトさんを見つめる。
「私が『森の人』? 誰が、いつ、そんなことを言ったのかね?」
わたしに言った気が……。
いや、わたしが質問したときは、そうだ、とも違うとも言っていない。
……ずるい人だ。
「じゃあ、何者ですか?」
「この際、はっきり言っておこう。出来ればミナには内緒にしていてくれたまえ。いいかね?」
「約束しましょう」
「そうかそうか。素直なのだな。……私は『森の守護者』だ。いや、違うな。『森の守護者』の中から一人だけ選ばれる、ある存在だ」
『森の守護者』から一人だけ?そんな存在、一つしかないじゃない!
「まさか……」
「そうさ。私は『森の王』だ」
荒れ果てた森の中に、その声は凛と響いた。