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星降る森  作者: 人鳥
第二章 空で星が光る日々
11/23

8

八部です。

これで第二章は終了します。

次回から第三章……お楽しみに。

 久しぶりの、我が家。いくら引越したといっても、コズとハギがいるこの場所が我が家であることに変わりはない。もちろん、テトさんと暮らす今の家も好きだ。

 恵まれている。

 二つも帰る場所があるのだから。

 コズは本格的にネルに懐いてしまい、ネルは照れたように笑っている。

 ハギは楽しそうにはしゃぐコズを見て微笑んでいる。

 わたしは、そんなみんなを見て笑う。

 こんな日々が続けばいいと思う。特に何かが起きるわけじゃないけど、けれど、こういう時間が幸せなんだと思う。

「見てなよ」

 ネルがコズの頭を撫でながら笑う。

「ほら」

 ネルが広げた両手の中から、一匹の森ネズミが現れた。小さな耳に、フサフサの毛。長い尻尾。愛くるしい姿だ。『小さな友達』だ。

「かわいい~!」

 滅多に見れない森ネズミの姿に、コズは大喜びだ。手の上に乗せて、そのフサフサの毛を撫でている。

「変わったな」

 ぽつり、とハギが呟いた。それは、わたしに向けられた呟きだった。なんとなく言いたいことはわかった。

「ネルのこと?」

「ああ。前はあんなにしゃべらなかった」

「『森の人』になってからね、口数が増えたのよ」

「そうか」

 そう言って、森ネズミで遊ぶコズを微笑みながら見つめるネルを見る。しばらくして、ハギが呟くように言った。

「ちょっと見ないうちに……立派になったんだな」

「人は成長するの。遅かれ早かれ、ね」

「ミナにそれを言われるとはな」

 クスクスと笑う。

 わたしもつられて笑う。

 そこへ、ネルがやってきた。コズは森ネズミと遊んでいる。たぶん、たくさんの魔力がこめられているのだろう。

「ミナ」

「うん?」

 自然と、わたしたちの視線がネルに集中する。コズは気付いていない。

 ネルは何かを決意した、そういう表情でわたしたちの前に立っている。

「どうしたの?」

「出よう」

「へ? もう帰るの?」

 どうやらわたしの見当違いだったようで、ネルは頭をかきながら苦笑した。ハギは怪訝そうな目でネルを見る。

「違うよ」

「えっ? じゃあ……なに?」

「うん。ボク、『星降りの夜』の儀式に出るよ」

「えっ? あ、うん!がんばろうねっ」

 自然とその言葉が出てきた。けれど、今回に限っては、わたしたちはライバル。『星昇る夜』のように、自分のがんばり次第ではどうにもならないからだ。

「今日でよくわかったよ。ボクには力が足りない」

 ネルは、思わず見とれてしまいそうな表情で続ける。

「ボクは力が欲しい。もっと、もっともっと」

 そして、わたしたちを交互に見た。

 森ネズミと遊ぶコズを見て微笑む。

「みんなを、守りたいんだ」

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