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2度目の投稿、連載では初の投稿となります。
今回はプロローグを、同時に第一話を投稿しました。
つたない文章、物語ですが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
女の子の主人公って、男の子の主人公よりも書きやすいな、なんて思う今日この頃。
聞いてる? ねえ、聞いてるの?
わたしの声が、森の空気に溶けた。彼は何も言わずに、ただ空を見上げている。
「わたし、絶対に成功させるわ」
聞いてる、と思う。
聞いていないようで、いつもちゃんと聞いてくれているから。
わたしよりも細くとんがった耳で、ちゃんと。
「ネルも、成功させてよ?」
ネルはやっぱり空を見上げていたけれど、でも、ちゃんと首を縦に振った。わたしも、ネルが見てる空を見上げた。空には星が無かった。けれど月だけは輝いていて、すこし寂しい感じがした。しばらくそのまま空を見上げていた。
心地よい沈黙がわたしたちをつつみ、夜行性の鳥たちが鳴く声が聞えてくる。やがて、その沈黙も終わりを告げた。
「ミナ」
一瞬空耳かと思ったけれど、わたしを呼んだのはネルだった。
「ボクだけ成功して、キミが成功しないなんてのは駄目だからね」
優しい、静かな声でネルは言った。その視線は、やっぱり月しかない空を見ていた。
「もちろんだよ。わたしを誰だと思ってるの? この『森の子』二番目の秀才、ミナなんだよ」
トンと自分の胸を叩きながら言う。けれど、それでも失敗することを考えてしまう。自分自身を勇気付けるために、もう一度自分の胸を叩いた。
効果はあまりなかった。
ネルは少しだけ笑って、立ち上がった。わたしの顔を少しだけ見て、両手を広げる。酷く演技がかった仕草だ。そして、わたしにその笑顔を見せた。
「ミナ、ミナ。ボクはこの森の頂点に立つことにしたよ」
突然何を言い出すのだろう。しかしネルの表情はいつもの儚げな顔じゃなく、力強さがあった。そしてそれは、とても魅力的な顔だった。わたしは少しドキッとした。けれど、それを悟られないように意識して平静を装った。
「じゃあ、絶対に今回は落とせないわね」
「うん」
そうだ。こんなところで足踏みをしていてはいけない。
「できるよね?」
「できるさ」
「絶対だよ?」
「絶対」
しばらく星空を二人で見上げ、そして別れた。
わたしはしばらくそのまま座っていた。